前回は、VIX指数について、そのそもそもの定義や、今注目を集めている理由、そして、今後の見通しについて解説しました。
前回の記事⇒VIX指数とは?リーマンショック以上に上昇した理由を分析
恐怖指数とも呼ばれるVIX指数ですが、S&P500と逆の相関を示すこと、そして、VIX指数自身もボラティリティの高い指標であるため、ハイリターンを狙えることから注目を浴びています。
今後、コロナウイルスの状況次第では、またVIX指数の上昇が期待される状況であり、投資のチャンスといえるかもしれません。
今回は、VIX指数を使った投資を行う上での注意点を中心に解説したいと思います。
VIX指数とVIX指数先物の違いをよく理解する
VIX指数を投資指標として活用する上で、最も注意したいのは、VIX指数とVIX指数先物との違いになります。この2つは、似ているようで最も異なるのです。
まずはそれぞれのチャートを見てみましょう。まずはVIX指数のチャートからです。これは前回見せたチャートと同じです。
(出所:Yahoo! Finance )
一方で、VIX指数先物のチャートを見てみましょう。
VIX短期先物を使ったETFである、VIIXのチャートになります。(こちらは設定されて10年ほどのETFになりますので、設定来のチャートです。)
明らかにVIX指数とは違う動きをしていることがおわかりでしょうか。念のため、重ねて比較してみましょう。
VIX指数が2011年に比べて、少なくとも今の段階では上昇しているのに対し、VIX短期先物を使ったETFは2011年時点から99%減価しています。
なぜ、こういったことが起きるのでしょうか。
これが、VIX指数とVIX短期先物との根本的な違いになります。
VIX先物はシカゴ・オプション取引所に上場している先物商品になります。
この先物は、金や原油の先物同様、「数か月先にこの価格で取引する」という性質を持っています。そのため、ロールオーバー(直近の先物を売って次の期限の先物を買うこと)が、先物指数の場合行われているのです。
VIX先物のコンタンゴとバックワーデーション
VIX先物においても、ロールオーバーで資産の入れ替わりが発生するため、コンタンゴとバックワーデーションに注意をする必要があります。では、どういった動きを見せるのでしょうか。
まず注意すべきは、コンタンゴです。結論からいうと、VIX先物は、非常にコンタンゴが起こりやすい商品だと言えます。
なぜならば、VIX指数というのは、投資家としては低くあってほしい、と願う指数になります。緩やかな右肩上がりこそが、投資家にとって最も心地いいからです。
よく、年利●%で10年積み立てればいくら、みたいなシミュレーションがありますが、それは年利●%で増え続けることが資産形成の上では非常に心理的に居心地がいいからです。
二年間+5%の方が、一年目+220%、二年目-50%であるより安心することは、投資をしている人であれば誰しもが持つ感情でしょう。
そのため、平時であれば基本的にVIXは低く抑えられており、また、ボラティリティ指数という観点から、期限が先の先物の方が価格が高いことが多くなっています。
よって、ロールオーバーの時に、コンタンゴによる損失が出ることが多いのです。
戦略としてVIX先物のショートを行っている人が多いのは、このコンタンゴによる先物価格の下落が期待できることが多いからです。
一方、バックワーデーションは起こり得るのでしょうか。
実際、こういった不安要素が高い時は、直近のVIX指数が高いため、バックワーデーションは起こり得ます。
しかし、VIX指数はその特性上、高い数字をキープするのが難しい指数です。(よほどの混乱期であれば別かもしれませんが、リーマンショックの時でも3~4か月程度でした。)そのため、バックワーデーションは起こっても一時的で、コンタンゴが起こりやすい商品であることを理解しましょう。
まとめ
VIX指数は確かにその特性上、コロナショックのような不安定な市場が続くときは、価格が上がりやすい傾向にあります。そのため、VIXへの投資を検討する人もいるでしょう。
しかしここで注意したいのは、VIXとVIX先物の違いです。
VIX先物は、先物がゆえにロールオーバーが起こり、特にVIX指数という特殊な指数を扱っている以上、コンタンゴが起こりやすい商品であり、逆にバックワーデーションが起こりづらく、基本的には長期で減価していく商品になります。
これをよく理解せずに投資すると、いつの間にか資産を失うことにもつながりかねません。
VIX指数は複雑な指数であるうえに、その先物となると、値動きが想定外の動きをすることもあります。
その際、知識がないと、流れに飲み込まれて、損失を出してしまうこともあるかもしれません。VIX投資を行うのであれば、まずはこういった、正しい知識を理解してから投資するようにしましょう。
次回はVIX指数、先物を使った具体的なETF、投資信託を紹介します。
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