米国株を牽引する「SaaS」銘柄に注目せよ!サブスクリプションモデルの将来性

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米国株は、一時のコロナでの減速を抜け出し、高値を窺おうとしています。

一方で、米中関係の冷え込みや、原油を巡る動向など、不安定な部分もあり、追加投資に二の足を踏んでいる人もいるでしょう。

今、投資すべきはどのような銘柄でしょうか。

高配当株は、FRBの意向等から、減配リスクは避けられない状況です。実際、RDSBやWBKなど、高配当投資家に人気の銘柄の減配は、市場に大きなニュースを与えました。

一方、GAFAに代表されるような大型株はどうでしょうか。

確かにビジネスでもモートがあり、十分な成長余地がありますが、一方で、時価総額はすでに十分に大きく、株価の上昇余力には疑問が残ります。

その中で1つ提示したのが、「胴元株」、つまり、インデックス指標や格付けといった、市場に連動して伸びるビジネスをしている企業、SPGIやMSCIのような企業です。

実際、ここ数年の伸びはめざましく、S&P500に比べても高いリターンを出しています。

一方、こういった企業は、社数が少なく、分散投資ができないのが難点でもあります。では、他に、どういった企業に上昇余地があるのでしょうか。私は、「小型SaaS銘柄」を、分散投資の1つとして紹介したいと思います。

世界の潮流となりつつある「SaaS」というビジネスモデル

投資家であれば、SaaSという言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。

改めて紹介すると、SaaSとは「Software as a Service」の略で、サブスクリプションモデル(継続課金モデル)を前提として、企業に毎月ベースでサービスを提供するビジネスになります。

特にソフトウェアタイプの会社が多いのが特徴です。

SaaS自体は2000年代前半からそのビジネスモデルが存在していました。

しかし、ここ近年、SaaSの注目度は急上昇しています。実際、アメリカにおいても、2018年にはSaaS関連で8社、2019年にも6社が新規IPOを行うなど、今や、時代のトレンドの最先端を行くビジネスモデルといっても過言ではないでしょう。

SaaSがここまで浸透した要因としては、やはり、クラウドの発達でしょう。

アマゾンがAWSとして、データセンターの定額販売(これも1つのSaaSモデルになります。)を始めたことになります。もちろんアマゾン自身がSaaSとして成長したことは言うまでもありませんが、アマゾンのAWSやマイクロソフトのAzureをベースとして、事業者自体がサービスを提供できるようになったのです。

これにより、SaaS事業者自体の開発コスト、管理コストが低減されたことで、多くのSaaS事業者が事業を拡大できたのです。そういった意味では、クラウドサービス抜きに、今のSaaSの隆盛を語ることはできないでしょう。

日本でも存在感を増すSaaS企業

そして、SaaSが影響力を増しているのは、アメリカだけではありません。日本でも同様に、SaaSビジネスは拡大しています。

代表的な会社は、<4478>freeeや、<3994>マネーフォワードでしょう。

どちらも会計ソフトを提供する企業であり、毎月の月会費でビジネスを行うSaaS事業者になります。

6月2日時点で、両者ともにマザーズの時価総額TOP10に入っており、将来が有望視されています。

個人的には、アメリカの企業の方が、グローバルへの拡大という点等において優位性が高いため、(また、そもそも米国株の方が、分散リスクをとりやすいため、)私は投資対象からは外していますが、日本株に投資をしている人であれば、投資対象候補に入れておいてもよいかもしれません。

SaaSのビジネスにおける強みとは?

では、そのSaaSですが、ビジネスにおいてどういった強みがあるのでしょうか。具体的なポイントを解説したいと思います。

安定した売上を得ることができる

まず1番大きいのは、売上高が安定することです。通常、ソフトウェアを販売する場合は、各社に個別に提供する、いわゆるオンプレミス型が一般的でした。この場合、ソフトウェアを一度提供したら、基本的には売上はそこで立って終わり、つまりフロー型のビジネスになります。

一方で、SaaSの場合、売上は毎月発生します。つまり、顧客が解約しなければ、半永久的に売上が立つわけです。顧客が増えれば増えるほど、売上も増えて、成長しやすくなります。このストック型のビジネスになるのが、SaaSの一番のメリットだと言えるでしょう。

キャッシュフローの面でも有利

ストック型のメリットとして、キャッシュフローの面でもプラスがあります。オンプレミス型の場合、基本的に製品が完成するまで支払いはありません。しかし、SaaSの場合、サービスを提供したその日から売上が入ってくることになります。また、売掛金の回収リスクも小さくなります。

コアの領域にフォーカスしやすい

また、オンプレミス型の場合、基本的に顧客のニーズに合わせて仕様を決めることが多く、この場合、カスタマイズに余計なリソースをとられてしまいます。一方で、SaaSの場合は、常に提供しているサービスは同じで、そのコアの領域にリソースを割くことができます。つまり、競争力がある程度つけば、その競争力そのものが差別化要因になるのです。

事業投資がしやすい、スタートしやすい

先ほどもいったように、SaaS型のビジネスの場合、ベースはアマゾンやマイクロソフトのクラウドを使うことになります。つまり、自社としての設備投資や事業投資は、装置産業のような大きいものではありません。

さらに、初期投資が必要でなく、在庫を持たなくてよいと言うビジネスになるので、必然的に資金繰りの面でも、メリットが大きいビジネスになります。

利益率が高い

販売するのはソフトウェアであり、しかも汎用性の高い商品を売っているため、必然的に利益率は高くなります。商品原価は規模が増えれば増えるほど低減され、その分粗利が高くなります。SaaSの中には粗利率が70%を超えるものもあるほどです。こういった利益率の高さも、メリットの1つです。

ユーザーとしてもメリットが大きい

ユーザーの視点からしてもメリットが大きいです。SaaSの場合、定額で支払いをする必要があるものの、大きな支出はないため、比較的導入コストが低く、サービスの利用をはじめやすいというメリットがあります。

しかも、いつも最新版にアップデートされたソフトウェアが使えるため、保守・運用と言ったコストもかかりません。SaaSビジネスは、事業者にとっても、ユーザーにとっても魅力的なビジネス形態なのです。

SaaSでも、特に、BtoB向けのSaaSに注目すべき理由とは?

ここまで、SaaSについて全般的なメリット等を語ってきましたが、私が注目したいのは、BtoB向けのSaaS、になります。

たとえばBtoCであれば、有名なところでネットフリックスなどがあります。ネットフリックスも定額を払って、コンテンツを使ってもらうサービスになり、確かにこちらも有望です。

しかし、個人的には、BtoB向けの方が、よりリスクが少ないと感じています。

なぜなら、BtoCのSaaSには、コンテンツ型のビジネスが多く、ある意味製作費等の原価が常にかかってくる形になります。そのため、営業利益はSaaSとして想定するよりも低い、というケースもあるのです。

また、常に新しいコンテンツを作るということは、逆にいえば、常に競争優位性を高く持たせるための工夫が必要、ということになります。

一方、BtoB向けのSaaSとしては、たとえばセキュリティソフトや、会計ソフトなどがあります。こういったものは、企業において必要なサービスのリプレイスであり、また、企業という性質上、一度契約すれば、乗り換えるのにコストがかかるからです。

また、追加機能等の拡充は必要であれ、コンテンツビジネスのように、次々新しいコンテンツを出す必要もないため、高い利益が期待できるからです。そういった意味でも、BtoB向けSaaSの方が、より有望だと考えています。

SaaSで知っておきたい40%ルール

SaaSに投資するにあたり、知っておきたいのが、「40%ルール」になります。

40%ルールとは、SaaS企業の持つ事業の強さについて、「成長率+利益率=40%」を超えているかどうか、ということです。

成長率は一般的に定額収益、つまりSaaSでの売上の成長率、利益率は営業利益率やフリーキャッシュフローマージンなどを使うことが多い。これが40%を超えていることが、事業の強さになるということです。

たとえば、売上高成長率60%、FCFマージンが-20%の企業と、売上高成長率20%、FCFマージンが20%の企業は、事業として同じ強さを持っていることになります。必ずしも、これで40%を超えている企業に投資すれば間違いない、というわけではありませんが、一つの参考として考えるい材料にはなると思います。

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(出所:Bloomberg )

SaaSに投資するなら、分散投資を忘れない

では、SaaSに投資するには、どういったことに気をつければいいでしょうか。

最も大事なのは、1つの企業ではなく、分散投資を行うということです。SaaSは魅力的ではありますが、決してそれが、1つの投資先に絞ることを正当化するわけではありません。

いわばIPOしたてのSaaS銘柄は、成長する可能性も高いですが、サービス自体がダメになってしまう可能性もあります。投資には、昔から「卵を1つのかごに盛るな」という金言があります。

全体のリターンを高くすることと同様に、リスクを最小化することも重要です。もし魅力的なサービスだと感じたとしても、投入する資金は全体の〇割まで、など、ルールを持って投資するようにしましょう。

まとめ

SaaSは、そのビジネスモデルの優位性(定額ビジネスであり安定している、粗利が高いなど)から、米国のみならず世界中で注目されているビジネスモデルになります。特にBtoB向けSaaSは、BtoCに比べても、個人的には期待値が高いと思っています。

SaaSに投資するには、魅力的な銘柄かどうかを見極めること、そして、ビジネス自体が強いことなどを考える必要があります。また、いくら魅力的だからといって、一括投資ではなく、資金管理はきちんとすることを心がけるとよいでしょう。

次回以降、いくつか有望な銘柄について、具体的に解説します。

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