早いもので、2020年ももう半分が終わろうとしています。
今年の上半期は、コロナに振り回された半年だったのではないでしょうか。
コロナで働き方そのものが変わった方や、ボーナス、残業代が減ったというような声も聞こえてきます。
一方で、個人投資家が増えたというのも、コロナの影響の一面だと言われています。
SBI証券の口座数が野村證券の口座数を抜くなど、個人投資家が、在宅勤務もあり、投資をする時間が生まれたということや、日銀が株価を支える政策をとり続けていることなどが、投資家が増えた一因と言えるでしょう。
そういった投資初心者の場合、まず、「何に投資すべきか」がわからないのではないかと思います。
そんな中で現在注目を集めているのが、「ロボアドバイザー」。
今回は、そんなロボアドバイザーの中でも、少し変わった視点を持つ、「FOLIO」について紹介したいと思います。
Contents
FOLIOってどんな会社?
まず、FOLIOという会社が、どういった会社かについて、簡単に説明しましょう。
FOLIOの設立は2015年12月に設立された、歴史の浅い会社になります。
代表者であるCEOの甲斐氏は、京都大学からゴールドマンサックスに入社後、FOLIOを創業しました。
在学中にプロボクサーのライセンスを取ったという異色の経歴の持ち主になります。
FOLIOの主なサービスは3つになります。
1つ目は、「ロボアドバイザー」、2つ目は、「LINEスマート投資」、3つ目は、「テーマ別投資」になります。
この3つが同社の事業の柱になっています。
これから1つずつ、それぞれのサービスについて、ほかのサービスと比べてどうなのか、使いやすいのか、という視点で、比較していきたいと思います。
FOLIOの「ロボアドバイザー」はどういったサービス?
では、まず、FOLIOのサービスの1つである、「ロボアドバイザー」から、その特徴を説明していきましょう。
(出所:FOLIO HP https://folio-sec.com/omakase)
FOLIOは、「おまかせ投資」というサービス名で、ロボアドバイザーサービスを提供しています。
おまかせブラザーズという5匹のキャラクターがいて、その中から、自分のリスク許容度に合わせて、チャレンジ運用から、安定運用までを選ぶ形になっています。
年齢、年収、資産額をベースに、どのタイプの資産運用がいいかを選んでくれます。
(出所:FOLIO)
このように、相性のいいロボットを選んでくれます。私は、リスクが2番目に高い、積極運用の「ジェームス」がよいと診断されました。口座開設などをしなくても、このシミュレーションを楽しむことができます。
(出所:FOLIO)
毎月どれくらい積み立てれば、30年後にはいくらになっている、というのもシュミレートしてくれます。
毎月4万円だと、30年後には、約4000万円くらいにはなるようです。
ロボアドバイザーのもとになっているのは、現代ポートフォリオ理論になります。
これは、ウエルスナビ等でも採用されているものになります。
ノーベル賞を受賞した理論!と、いかにもすごいように見せていますが、他社と差別化しているわけではなさそうです。
ちなみにジェームスを選ぶと、ポートフォリオは以下のようなものになるようです。
(出所:FOLIO)
10万円から始められて、かつ手数料は1%(3000万円を超えた部分については0.5%)となっています。
このあたりも、基本的にはウエルスナビと同水準であると言ってよいでしょう。
FOLIOはロボアドバイザーとしておすすめできる?できない
まず、ロボアドバイザーですが、以前別の記事でも紹介したように、ロボアドバイザーそのもの自体は決して悪いサービスではありません。
しかし、ロボアドバイザーと他の投資を混ぜてしまうと、ポートフォリオの管理が煩雑になり、結局最適なリスク・リターンがとれなくなります。そういった観点で、ロボアドバイザーを行うのであれば、ロボアドバイザーだけで投資すべきです。
そして、その中で、FOLIOを選ぶかどうか、という議論ですが、個人的には、あまりお勧めはしません。
理由は2つあります。
1つ目は、投資対象の不透明さです。ホワイトペーパーによると、それぞれの資産クラスのETFに投資する、と書いてあるので、基本的には、この辺もウエルスナビと同様、VWOやVTIに投資することになるのでしょう。
しかし、その具体的なETF名が書いていないということは、逆に言うと、恣意的な運用をしかねない、ということにもつながります。まずこの不透明性で、ほかのロボアドバイザーに劣後していると考えます。
もう1つは、規模です。投資理論が同じ、手数料が同じ、そして銘柄も同じとなると、基本的には、規模が大きいほうが、コストダウン等の余地が大きくなります。残念ながら、FOLIOは他のロボアドバイザーに比べると規模が小さく、その点でも、劣後しているといえるのではないでしょうか。
手数料負けしているわけではないので、FOLIOを選ぶな、とは言わないまでも、素直に規模の大きいロボアドバイザーのほうがよいのではないかと感じます
FOLIOの「LINEスマート投資」とは?
続いて、2つ目の事業の柱である「LINEスマート投資」について、使えるか使えないか、どういったサービスか解説します。
まず、はじめに、LINEスマート投資とはどのようなサービスなのか、具体的に解説していきましょう。
基本的には、サービス名にある通り、「LINE」と連動したサービスになっています。
基本的には、LINE PAYを活用して、毎週いくらかの金額を積み立てていく形になります。
(出所:FOLIO HP https://line.folio-sec.com/static/onecoin/lp/index.html)
基本的には毎週、いくらかの金額を設定するだけで、自動的にそれがLINE PAYより引き落とされる形になります。目標額を設定して、それにむけて、コツコツ積み立てを行う、という形になります。
LINEスマート投資の特徴は?
では、LINEスマート投資には、どのような特徴があるのでしょうか。
最も大きなメリットは、「ほったらかし」ということでしょう。
基本的に、入金さえしておけば、毎週自動的に積み立てをしてくれます。また、1週間500円という「少額」から始めれることもメリットといえるでしょう。
もう1つのメリットは、LINEポイントを投資原資として使えることです。基本的に余らせがちなポイントを、投資に回すことができます。
LINEポイントはよく無料で配布しているので、うまくいけば、ただで投資ができるかもしれないのです。
手数料は1%(3000万円を超える部分については0.5%)と、こちらも自動投資(ロボアドバイザー)と同じ水準になっています。
LINEスマート投資でどれくらいのリターンが得られる?
では、LINEスマート投資では、どれくらいのリスクをとって、どれくらいのリターンを得ることができるのでしょうか。
基本的に、「LINEスマート投資」では、投資手法などを選ぶことはできません。前回の「おまかせ投資」と同様に、ロボアドバイザーの投資のみになります。
(出所:FOLIO HP)
基本的には、90%以上の確率で期待リターンを出しているように、債券が多めの、低リスクの資産運用になっています。25年投資して、だいたい1.7倍くらいになるようにシミュレーションされていますね。
基本的には1種類しかないので、必然的にローリスクになるようになっています。アセットクラスはおまかせ投資と同じになります。
LINEスマート投資は使える?使えない?
それでは、LINEスマート投資は、投資対象として魅力的なのでしょうか。
結論から言うと、「本格的な投資ツールにはなりえない」と考えています。
基本的に、投資は、自分のリスク許容度に合わせて、高いリターンを目指していくものになります。しかし、LINEスマート投資では、まず自分のリスク許容度に合わせることができません。その時点で、本格的な投資ツールにはなりえないのです。
リスク許容度が小さいように設計されてはいるものの、「どれくらい小さいか」もわからず、また、どれくらいのリターンが実際に得ることができるかもわからないのです。透明性の高さは、長期、短期にかかわらず、資産運用においては必須とも言えます。
それがない時点で、LINEスマート投資は本格的な投資には向かないと考えます。
あえて言うのであれば、使いどころがないLINEポイントを入れておく分にはよいと思います。しかし、毎週500ポイントものLINEポイントをためるのは結構難しいですよね。私であれば、たまたまポイントが貯まったときに、使い道がないから放り込んでおく、そういった使い方になると思います。
少額投資であれば証券会社で投資信託を積み立てたほうが、投資の透明性、理解という意味でもよいでしょう。というわけで、厳しい意見ながら、LINEスマート投資は、本格的な投資には向かないと考えます。
FOLIOの「テーマ投資」とは?
最後に、FOLIOの3つ目のサービスであり、FOLIOの最も特徴的ともいえる、「テーマ投資」について、特徴を解説したいと思います。
まず、はじめに、テーマ投資とはどのようなサービスなのか、具体的に解説していきましょう。
テーマ投資とは、その名の通り、単一の企業ではなく、特定の「テーマ」に合わせて、そのテーマに沿った企業に、まとめて投資できるサービスになります。
(出所:FOLIO HP https://folio-sec.com/about/theme)
基本的な投資スタイルは、あるテーマに沿って、10社の株式が用意されています。
一定の金額を、その10社に対し、分散投資する、というのが、テーマ投資の基本的なスタイルになります。
10社の中身については、それぞれのテーマによって異なります。たとえば、「VR」というテーマだと、以下の10社が対象になります。
(出所:FOLIO HP https://folio-sec.com/theme/virtual-reality)
それぞれの株式に対しては、基本的に1株単位の「端株投資」になります。
テーマは、全部で80種類以上あります。直近だと、5G関連のテーマが、1か月のリターンが高いようです。
(出所:FOLIO HP https://folio-sec.com/theme#theme-list)
テーマ投資のメリットは?
では、テーマ投資には、どのようなメリットがあるのでしょうか。整理してみましょう。
●少額で複数の企業に投資ができる
基本的にはテーマ投資は端株投資です。そのため、少額で複数の企業に投資ができることが特徴になります。
たとえば、VRの場合、上記の組み合わせだと、約8万5000円でテーマ別投資を行うことができます。他のテーマにしても、基本的には10万円前後で投資ができます。通常日本株を買うのであれば、100株単位で、1銘柄買うのにも数万~数十万かかります。それが分散できるというのは、メリットの1つでしょう。
●同じテーマでも4つの投資方法がある
もう1つは、同じテーマであっても、リスク許容度に合わせて、4つの投資スタイルから選べる、というところです。
リスクとリターンのバランスをとったバランス型、リスクを抑えたディフェンス型、成長性を重視する成長型、割安さを重視するバリュー型の4つがあります。同じVRであっても、バランスとグロースでは、銘柄の構成比が違ってきます。
【VR・バランス】
(出所:FOLIO HP)
【VR・グロース】
(出所:FOLIO HP )
テーマ投資は使える?使えない?
それでは、テーマ投資は、投資対象として魅力的なのでしょうか。
結論から言うと、こちらのテーマ投資も、なかなか長期投資には向かない、と考えています。
1つは手数料です。テーマ投資の手数料は、0.5%となっています。
つまり、10万円で500円の手数料がかかります。
一方、SBI証券では、50万円までは手数料無料のサービスがあるなど、基本的に少額の場合、ネット証券は、手数料がほぼ無料に近づいています。
そういった意味で、テーマ投資は、割高だと言えるでしょう。
もう1つは、テーマ投資の中途半端さです。少額を売りにしていますが、同様の投資信託であれば、積み立てで1000円から投資ができます。
「寿司」や「自転車」など、そういったニッチテーマの投資信託はないのですが、そもそも「寿司」をテーマにしたファンドに投資する理由に、明確なものがあるのでしょうか。
たとえば5Gやサイバーセキュリティのような大きなテーマであれば、投資信託にも似たようなものがありますし、そして、投資信託の場合、株だけでなく、債券や外国株等も組み合わせていることがあります。
リターンが出るかどうかは、あくまで時代の流れにあった、という「偶然」の要素が強いので、どちらのリターンがいいかについては語りませんが、10種類という中途半端さ、金額も10万円という中途半端さは、かえって「投資しづらい」ように思えます。
まだ端株投資をしたいのであれば、LINE証券やネオモバ等を使って独自に行ったほうが、納得感は高いと思います。
テーマ投資は、「端株投資」にも「投資信託」にもなれない、きわめて中途半端な商品設計であると言えるでしょう。
まとめ
プロボクサーライセンスを持つ異色の経歴のCEOが率いるFOLIO。サービスは、「ロボアドバイザー」「LINEスマート投資」、「テーマ別投資」の3つのサービスを展開しています。
その中のロボアドバイザーについては、基本的にはオーソドックスなロボアドバイザーであると言えるでしょう。
しかし、他社に比べて透明性が高くないこと、規模が小さいということから、個人的には強くおすすめできるものではありません。よく比較したうえで、サービス利用をすることをお勧めします。
テーマに沿って10種類の株式に分散投資でき、なおかつ端株投資ができるFOLIOですが、よく見ると、端株投資のような手軽さはなく、また、投資信託のような幅の広さもないこと、また、手数料の観点からも、おすすめできない商品だと言えます。
FOLIOの商品は、個人的な意見になりますが、いずれも長期投資には向かない、と思います。それでも、使うとすれば、LINEスマート投資を、LINEポイントの使い先として検討する程度でしょうか。
もちろん投資は個人の責任なので、FOLIOを面白い、と思って投資する人もいるかもしれません。
しかし、長期投資を考えるのであれば、「本当に便利か」「本当に有効か」を考えてから、商品を選ぶようにするとよいのではないでしょうか。
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