空前の盛り上がりを見せている仮想通貨市場ですが、ETH(イーサリアム)の価格高騰が止まりません。
2021年10月29日にこれまでの最高値4,384ドルを上回る4,458ドルを記録したことを皮切りに、その後も最高値の更新を続け、2021年11月8日時点では史上最高値の4,737ドルまで価格が高騰しています。
これまでもETH(イーサリアム)は大きく価格の上昇と下落を繰り返してきましたが、今回の値動きは一過性のものなのでしょうか。また、今後はどのような展開が予想されるのでしょうか。
現在ETH(イーサリアム)を保有している方やこれから投資を検討している方向けに詳しく解説していきます。
Contents
ETH(イーサリアム)の特徴
イーサリアムは本来、アプリケーションの開発環境を提供するプラットフォームの名称です。このプラットフォーム内で使用される仮想通貨をイーサ(英: Ether、単位: ETH )といいます。日本では、プラットフォームを意味するイーサリアムと通貨を意味するイーサをどちらも「イーサリアム」とする表現が普及しています。
まずは、イーサリアムの大まかな特徴について見ていきましょう。
歴史
イーサリアムは2013年にヴィタリック・ブテリン氏によって開発されました。
2015年に正式リリースされ、リリース直後には0.8ドルをマークしています。
その後は処理能力の向上を目指し、以下の4段階のアップグレードを順に行っています。
- フロンティア
- ホームステッド
- メトロポリス
- イーサリアム2.0
現在は「イーサリアム2.0」の段階に入っており、完了すると承認作業などの処理速度が大幅に向上すると言われています。
時価総額・流通量
2021年11月現在の時価総額は日本円で約63兆円と、ビットコインに次いで世界第2位の取引規模となっています。
また流通量(発行通貨量)は1億1825万枚で、発行枚数の上限はありません。
主な機能
スマートコントラクト
スマートコントラクト機能はイーサリアムの大きな特徴です。ブロックチェーン上にプログラムを書き込むことで、予め決められた設定を自動で実行する機能のことをいいます。
例えば、2者間で通貨の交換をしたい場合に「AさんからBさんへ1ビットコインを送金する」「BさんからAさんへ20ETH送金する」といった2つの要件を書き込むと、これら2つが同時に満たされた場合のみ自動で取引が実行されます。
あくまでプログラムに基づき条件通り実行されるため、第三者を仲介する必要がなく従来の金融商品の取引方法を大きく変える可能性があると言われています。
また、商品の売買や不動産取引などにも応用できる技術としてさらなる実用化が期待されています。
分散型アプリケーション構築のためのプラットフォーム
企業や政府、銀行といった中央管理者不在で稼働するアプリケーションのことをDapps(Decentralized Applications)といいます。
Dappsは参加者全員がデータを分散管理することで、仕様変更などの意思決定に関わることができる点が大きな特徴ですが、特定の技能を持つエンジニア以外には開発が難しい分野とされてきました。
しかし、イーサリアムが構築するための開発環境を提供するプラットフォームとしての機能を備えたことにより、Dapps開発の敷居が大きく下がったため、現在ではいくつものDappsがイーサリアムによって誕生しています。
ERC-20規格によるトークン発行
イーサリアムには、新しい仮想通貨(トークン)を簡単に作り出すことができる機能が備わっています。
新しく生成する仮想通貨は「ECR-20」と呼ばれる互換性のある規格が使われているため利便性が高く、ICO(新規仮想通貨公開)を行う際に多く用いられています。
これまでの価格推移
これまでに価格が大きく変動したタイミングでどのような出来事があったのか、時系列で確認してみましょう。
参考:Trading View
2016年6月
THE DAO事件
自律分散型投資ファンド「The DAO」が取引基盤とするイーサリアムベースのブロックチェーンがハッキングを受けた事件です。
2016年6月17日にThe DAOのアカウントから約360万ETH(約52億円)が流出しました。
仮想通貨の核となる、ブロックチェーン技術への信頼性が揺らぐ大きな問題となり、価格を大きく下げました。
参考:Trading View
2017年2〜6月
EEA(イーサリアム企業連合)発足
イーサリアムを企業が活用する際にEEAが「サポート」や「協力」をすることで開発を促進していくことを目的として設立されました。
マイクロソフトやJPモルガン、現在では日本からトヨタ、KDDIなどの大企業が参画しています。
参考:Trading View
2017年10月〜2018年1月
「メトロポリス」アップデートの第1段階となる「ビザンチウム」の実装
2018年1月〜4月
仮想通貨バブルの崩壊・G20サミット開催
仮想通貨元年と呼ばれた2017年から一転して、2018年は仮想通貨バブルが崩壊しました。
ビットコインが大きく下落したのを受けてイーサリアムをはじめとする他のコインも軒並み大きく価格を下げました。
参考:Trading View
2019年2〜6月
「メトロポリス」アップデートの第2段階となる「コンスタンティノープル」の実装
参考:Trading View
2020年1月
「ムーア・グレイシャー」アップデート 実装
2020年3〜4月
コロナ・ショック
参考:Trading View
2020年12月1日
「イーサリアム2.0」第1段階のアップデートが実装
2015年の正式リリース後、何度かアップデートを行っており、その都度イーサリアムの価格は上昇傾向を見せています。
価格高騰の経緯と要因
現在の価格状況
まずは直近3ヶ月のチャートを見て見ましょう。
参考:Trading View
8月5日に予定されていた「ロンドン」アップデートが完了したことを皮切りに上昇トレンドに入りました。
その後、一旦上昇と下落を繰り返しながらも10月27日には大型アップデート「アルタイル」が完了し、2021年10月29日にこれまでの最高値4,384ドルを上回る4,458ドルを記録しました。
その後も最高値の更新を続け、2021年11月8日時点では史上最高値の4,737ドルまで価格が高騰しています。
価格高騰の要因
Facebookの社名変更
一番大きな要因はFacebookが10月28日に社名を「Meta」に変更したことでしょう。
9月段階でも約55億円をメタバース分野に投資するという発表がされていましたが、今回の発表によりメタバース領域の技術発展が現実的に大きく進むとの見方が広がりました。
GAFAとして世界を代表する大企業が社名を大幅に変更したというのも大きなインパクトがあったのかもしれません。
この直後から、メタバース、NFT(ノンファンジブル・トークン)、ゲーム・トークン、など関連銘柄において価格の上昇が見られるようになりました。
イーサリアムベースのVRプラットフォーム、ザ・サンドボックス(The Sandbox)の暗号資産SANDは史上最高値を更新しています。
また、エンジンコイン(ENJ)、Illuvium(ILV)などのゲーム関連の暗号資産も上昇しました。
このような流れの中で、親和性の高いイーサリアムの活用について期待が高まり、価格が大きく上昇していったと考えられます。
アルタイル実装
これまでもアップデートについては、市場も好意的に捉えてきましたので、今回のアップデートについても実装された8月頃から好影響が出ていると考えます。
また、「アルタイル」のアップデート内容には基本手数料の導入やその手数料がバーンされるという内容を含んでいたため、通貨価値が高まることが期待されたのではないでしょうか。
今後の見通し
では、今後のイーサリアムの将来性についてはどのように考えるべきでしょうか。
仮想通貨に関してはまだ未成熟な市場であるため、要人の発言の影響を受けやすい、ハッキングに対する脆弱性など依然としていくつもの問題を抱えています。
とはいえ以下で示すような好材料が多く、伸びしろがあるため、今後しばらく価格は上昇していくのではないかと考えています。
メタバース分野での市場規模拡大
今回のFacebookの社名変更の影響は市場に大きな影響を及ぼしました。日本でも、メタバース関連銘柄に数日間でかなりの価格上昇が見られます。
AR技術の発展やコロナ禍での非接触コミュニティの形成、NFTブームなど様々な要因が重なり、今後本格的に「メタバース」領域の可能性が広がっていくと考えた人が多くなっているのではないでしょうか。
メタバース分野の市場規模が拡大するにつれて、イーサリアムはもちろん仮想通貨全体の注目度はまずます上がっていくでしょう。
ETH2.0へのアップデート
ETH2.0へのアップデートが着実に実行されていけば、その都度イーサリアムの価値を向上させることができるでしょう。
送金速度の向上や手数料の削減といった利便性の向上が見込まれるため、通貨購入者が増えていくことが期待できます。
DeFi分野の成長に連動
DeFi(分散型金融)とは銀行や証券会社などを仲介せずに金融商品の取引を可能にすることを目的とした金融アプリケーションで、その多くはイーサリアムのブロックチェーン上につくられています。
現在は利回りが高い投資対象として認知されていますが、DeFiのサービスの実用化が進んでいけば、連動してイーサリアムの価値も高まっていくでしょう。
企業の活用拡大
今後企業によるICOが新しい資金調達手段として広がっていくことにより、共通規格を提供するイーサリアムの機能がより重要な役割を果たすようになるでしょう。
またEEA(イーサリアム企業連合)があることで、継続的に開発のサポートを得られるということもイーサリアムの強みです。
加盟企業が増え、企業での活用や投資が進んでいくということが予想されます。
ETF上場の広がり
2021年10月に米国でビットコインETFが上場したことにより、ビットコインは大きく価格をあげて最高値を更新しました。
米国をはじめとする世界各国でETFの承認が進めば、イーサリアムもビットコイン同様価格が上がっていくでしょう。
すでに2021年4月にカナダではイーサリアムETF が承認され取引が開始されています。
まとめ
イーサリアムの価格高騰の要因と今後の展望について、解説していきました。
イーサリアムを時価総額で上回るビットコインは2021年10月に史上最高値を記録しましたが、その後は上値が重く横ばい状態が続いています。
仮想通貨投資の魅力が、良くも悪くも「ボラリティが高い」所にあると考えると、現在は皆がビットコインの次に大きく値上がりする通貨を探している状況とも言えるでしょう。
本記事で挙げたように、好材料が多いETH(イーサリアム)は今後もより人気が高まっていくのではないでしょうか。
今後を見据えて、今から投資しても遅くはない暗号資産だと思います。
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