他のファンドと何が違う?ハイパフォーマンスの「ひふみ投信」の謎に迫る
こんにちは。投資家のkzです。
私は、サラリーマン投資家は、原則、コストの面からも、インデックスファンドを選ぶべきであり、また、インカムゲインとキャピタルゲインであれば、利益が確定するインカムゲインをメインに据えるべきだと考えています。
基本的な考え方としてはこれは揺るぎません。(インカムゲインとキャピタルゲインの割合で思うところはありますが。)
参考:個人投資家はキャピタルゲインとインカムゲインどちらを重視すべきか?
しかし、私の発想とは全く逆で、「配当金を出さないアクティブファンド」で、最近話題の投資信託があります。
それが「ひふみ投信」です。今回は、そんなひふみ投信について、紹介したいと思います。
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ひふみ投信を運用するレオス・キャピタルワークスとは?
まずは、ひふみ投信の運用会社である、レオス・キャピタルワークスについて紹介しましょう。
運用会社であるレオス・キャピタルワークスは、2003年に創業された、比較的新しい会社になります。
経営理念として、「資本市場を通して社会に貢献する」ことを目標としており、具体的には、ファンドの販売のほか、企業の年金の運営アドバイス等も行っている会社になります。
レオス・キャピタルワークスが運営しているファンドは、ひふみ投信・ひふみプラス・ひふみ年金の3本だけになります。違いはあとで説明しますが、本質的には同じファンドになりますので、実質一本で運用していることになります。
他の運用会社が、複数のファンドを運用しているのが一般的であることを考えると、特殊なケースであると言えるでしょう。
代表の藤野氏は、カンブリア宮殿などにも出ていますので、もしかしたら知っている人がいるかもしれません。いろいろな意味で、特徴的な会社であるといえるでしょう。
ひふみ投信はどのような投資信託なのか?
では、実際、ひふみ投信は、どのような投資信託なのでしょうか。特徴を見てみましょう。
ひふみ投信の思いとして、「ためて、ふやして、進化する」というものがあります。
これは、長期的にお金を貯めて、そのお金を運用して、増やすことで、お金から自由になり、チャレンジする。そうして人として進化する、ということを表しています。
具体的な特徴としては、長期的な資産形成を前提としています。そのため、分配金等は一切ありません。運用益はすべて再投資に回されます。
また、投資対象については、「主に日本の成長企業」となっています。代表の藤野氏は、投資哲学として、以下のように語っています。
「守りながら増やす」のが運用方針です。具体的には「地味で地道な会社」に投資しています。よく例に出すのが東証2部上場の朝日印刷という会社。知名度はありませんが、毎年5~15%は利益成長しており、株価も10年で約3倍になっています。何の会社かというと医薬品の箱の印刷をしている会社なんです。シェアも非常に高い。薬事法があり、法律に従って印刷するのがめんどくさいので、大手印刷会社はやらないからです。すごい会社ですが、日本にはこういう会社がたくさんあります。多くの人はソニーとか三菱重工業とか、日立とかそういう会社に投資すると「安心・安全」だと思っていますよね。でも「安心」=「安全」ではありません。大手はライバルも多く、景気の影響を強く受ける。そうではなくライバルが少なくて景気の影響を強く受けない会社に投資するのが僕らの投資スタイルです。
このように、自分の足で稼いで、安定的に利益を創出する会社を見つけると、そこに投資する、というスタンスをとっています。定量的な分析に加え、定性的な分析を加えることで、企業の成長性を見抜き、リターンが高い株に投資ができることを特徴としています。
実際に、どのような銘柄に投資しているか見てみましょう。2018年3月時点の、銘柄の組み入れ割合のうち、上位5社は以下のようになっています。アマゾンやビザのような世界的な企業から、東京センチュリーという、あまり知られていないような会社まで、幅広く投資しています。
また、柔軟な対応を心掛けているというように、時々の時世に応じて、株の保有バランスを変えているのも特徴です。ひふみ投信のマザーファンドの銘柄割合は、以下のように変化しているそうです。景気状態に合わせて、銘柄割合を変化させているのがわかるでしょうか。
ひふみ投信の手数料はどれくらい?アクティブファンドの中では割安?
アクティブファンドは、手数料が一般的には高めになっていますが、ひふみ投信はどれくらいなのでしょうか。
一般的に、投資信託のコストは買い付け時・解約時に手数料という名目で発生するコストと、ランニングとしてかかってくる信託報酬とがあります。
ひふみ投信は、買い付け時・解約時にはコストがかかりません。また、信託報酬は、税抜きで年0.98%となっています。
0.98%という数字は、もちろんインデックスファンドに比べると高くなっています。では、他のアクティブファンドと比べるとどうでしょうか。
SBI証券の人気投信ランキングで上位の、大和住銀の日本株アルファ・カルテット(毎月分配型)と比較してみましょう。
毎月分配型のファンドは約2%近いものとなっており、2倍近い差がでています。
他のアクティブファンドも、だいたいが0.8%~2%の信託報酬となっています。
その観点でいけば、ひふみ投信は比較的低コストのアクティブファンドと考えられるでしょう。
さらに、ひふみ投信には、コスト面でプラスの特典があります。ひふみ投信では、長期的な資産形成を推奨しており、そのため、5年以上保有している投資家には、コストの減免措置があります。
具体的には、100万円分のひふみ投信を購入した際、5年以上だと、2000円分、10年以上だと、4000円分のひふみ投信が毎年還元される仕組みになっています。
これにより、実質的なコストは低下します。この点を含めても、比較的低コストなファンドであることに間違いはないでしょう。
ひふみ投信、ひふみプラス、ひふみ年金の違いは?
レオス・キャピタルワークスには、ひふみ投信、ひふみプラス、ひふみ年金と、3つのファンドがあります。
上で、「実質的には同じ」といいましたが、ではなぜ違いがあるのでしょうか。
違いは、制度と販売会社の違いだけです。
なぜなら、3つとも、「ひふみマザーファンド」が運用母体となっているからです。ひふみ投信は、レオス・キャピタルワークスとの直接の売買になり、金融機関を通す場合が、ひふみプラス、確定拠出型年金として利用できるのが、ひふみ年金になります。
パフォーマンスにはほとんど差はありませんが、若干コストに差があります。
コストだけだと、ひふみ年金が0.76%と、ひふみ投信、ひふみプラスは0.98%と、最も安くなります。
しかし、ひふみ年金は、確定拠出型年金としてしか使えないことには注意が必要で、また、販売会社も、8社程度しかありません。
また、ひふみ年金、ひふみプラスは、販売会社に応じて、販売手数料がかかってくることには注意が必要でしょう。(ひふみプラスも、インターネット証券の場合は、販売手数料がかからないことが多いので、そこまで気にする必要はありませんが…)
また、ひふみプラスは、純資産総額で手数料が変わるという、少しユニークな手数料体系をとっています。
ひふみ投信のパフォーマンスは?
では、気になるパフォーマンスは、どのようになっているのでしょうか?
ひふみ投信の設定来のチャートは以下のようになっています。
ご覧のように、右肩上がりのキレイな成長を続けていますね。10000円で始まったこの投信も、現在の価格は50000円を超えています。設定来で400%の成長をしている形になります。
有言実行の通り、成長力の高い株に目をつけて、長期的に再投資を行ってきた結果であるといえるでしょう。
それぞれの期間のパフォーマンスは以下の通りです。ここ最近は株価の停滞もあり、パフォーマンスも停滞していますが、長期的に資産形成する、という観点では、どの時期も高いパフォーマンスを出していることがわかるのではないでしょうか。
ひふみ投信が本当によいファンドかどうか、検証する
では、本当にひふみ投信がよいファンドかどうか、きちんと検証してみましょう。
単純に、設定来5倍と言う数字が、本当に効率がいいかどうか、踏み込んで考えていきたいと思います。以下のようなシミュレーションを組んでみました。
・比較対象は、VTおよびVTI
一般的に、よく買われているETFとして、VT、VTIというものがあります。VTは、世界全部に投資するインデックスファンド、VTIは、米国株全部に投資するインデックスファンドになります。
・計算は簡略化されたものを使用
計算が複雑なため、以下のように簡略化して見てみましょう。
それぞれの3年、5年、10年のリターンを比較。ひふみ投信及びVTの10年は年初来の数字とする。
VT、VTIは、3年、5年、10年の平均リターンを複利運用するとする。
VTIの平均配当は2%、VTの平均配当は2.5%(いずれも過去10年の平均値)を採用。20%税引き後が再投資にまわるものとする。
ひふみ投信のみ直近の数字。VT、VTIは2017年12月31日時点の利回り。
・気になるパフォーマンスは?
では、気になるパフォーマンスを見てみましょう。途中の計算は省略します。
ご覧のように、VT、VTIに比べても、ひふみ投信はアウトパフォームしています。
もちろん他のファンドに比べると、パフォーマンスが下回る可能性があるわけではありません。
また、計算は相当簡略化していますので、VT、VTIのパフォーマンスはもう少し上がる可能性もあります。また、VTIは、リーマンショックの影響を受けているため、10年パフォーマンスは少し弱くなっています。
しかし、このような代表的なインデックスファンドに比べても、アウトパフォームしているということは、注目すべき事実であるといえるでしょう。
なぜ、ひふみ投信のパフォーマンスは高いのか?
ひふみ投信のパフォーマンスが高い点として、2点あると思います。
1つは、「自分たちのリスクを明確にして運用している」ということです。世の中のアクティブファンドの多くは、全世界REITだとか、新興国株とか、何等かのテーマをもってファンド組成しています。
しかし、ひふみ投信は、「自分たちが良いと思ったものを買う」という柔軟性を持っています。これは逆にいうと、ファンドが儲からないのは、市況ではなくて、自分たちのパフォーマンスが悪い、ということを意味するのです。
きちんとリスクを明確にしているため、逆を言えば、高いリターンを出すことができるのではないでしょうか。
もう1つは、現金で保有する、という手段を持っているということです。多くのファンドは、現金での保有を許しません。なぜなら、インデックス指標に近づける、あるいはオーバーアチーブすることが目的だからです。
逆にいうと、市況が弱い時であっても、投資せざるを得ないのです。
しかし、ひふみ投信はその枠から逸脱しており、最大50%まで現金資産を持つことを認めています。これは、相場が弱くなった時のブレーキとして、非常に有効です。弱い時に投資しない、という戦略をとれるのも、高いパフォーマンスの要因でしょう。
ひふみ投信はポートフォリオの補完的な役割として活用すべき
結局のところ、ひふみ投信は、買うべきでしょうか。買わないべきでしょうか。
私は、「ポートフォリオの補完的な役割として、買ってもよい」と思います。
買うメリットとしては、「自分が選ばない株を持てる」ということです。アマゾンやビザはともかく、東証2部の株を、成長するから、ということでリスクを持つ投資は、時間がないサラリーマンにはなかなか出来るものではありません。
こういう株を持てる、高いパフォーマンスを出すファンドとして、活用する分には非常に有効だと思います。
しかし、過信しすぎは禁物です。なぜなら、過去のパフォーマンスは、必ずしも将来のパフォーマンスを約束しないからです。あるとき、急にパフォーマンスが出せなくなったとしても、不思議ではありません。
なんにでも投資できるということは、ある意味、先が読めないということだからです。VTやVTIは世界経済が発展する限りは右肩あがりでしょうから、その分リスクは大きくなることになります。
どれだけ伸びているファンドでも、それが個人や組織の力量による場合、過信は禁物でしょう。
まとめ:ひふみ投信はおすすめのアクティブファンド
ひふみ投信は、レオス・キャピタルワークスが運営する、アクティブファンドになります。高いパフォーマンスと、アクティブファンドにしては安い信託報酬が魅力だと言えるでしょう。
ひふみ投信が高いパフォーマンスを出す理由として、成長力の高い小型株に投資できること、世界中の投資対象に対して柔軟な投資ができること、さらに、市況が悪い時に、「現金」で保有できること、などがあります。
実際、VTやVTIなど、世界的なファンドに比べても、3年、5年、10年いずれもアウトパフォームしています。
こういった小型株に投資するファンドで、安定して成長しているファンドは他に例を見ません。サラリーマンが個別の小型株で、成長力があるものを見極めるのは、時間的な制約もあり、難しい部分もあるでしょう。
過去のパフォーマンスが将来のパフォーマンスを約束するわけではないので、過信は禁物ですが、ポートフォリオの補完的な役割として、組み入れてもいいかもしれませんね。
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