バイデン大統領が推し進めてきた、1兆9000億ドル(約200兆円)規模の追加経済対策が可決されました。
しかし、全ての法案がそのまま通った訳ではなく、一部修正されながら賛成50、反対49の小差での可決となりました。
金額規模や法案通過の可否のみが報道されることが多く、実際の詳しい内容やそれが株価や為替にどんな影響を及ぼすのか、少し分かりづらいと感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、アメリカの追加経済対策について詳しく解説していきたいと思います。また、可決後の相場の変動などについても見ていきます。
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今回の追加経済対策の概要
年間所得7万5000ドル(約815万円)未満の個人に1400ドル(約15万円)の直接給付
昨年12月に、トランプ政権下で決めた国民1人当たり600ドルの給付金に、さらに1400ドルを追加するものとなります。
年間所得が7万5000ドルを超える場合は所得に応じて段階的に給付額が削減され、8万ドル以上は支給対象外となります。予算は約4000億ドル(約43兆円)。
失業保険給付の上乗せ額を週300ドル(約32000円)に、9月まで延長
約950万人が対象となる失業給付の上乗せも盛り込まれました。下院を通過した際には週400ドル(約43000円)でしたが、共和党の反対を受けて、民主党はなんとか現行の失業給付上乗せ措置が期限を迎える3月15日までに法案を成立させたい考えもあり金額を縮小し、落としどころを作った形になりました。
州政府と地方自治体、学校に4800億ドル
州・地方は財政悪化によるコスト削減で、職員数が1年で7%減少しています。ニューヨーク市では20年の殺人件数が前年比44.8%も増加するなど全米各地で治安の悪化が深刻化しています。3500億ドルは各州政府や地方自治体に、1300億ドルは学校に配分されます。
新型コロナウイルスのワクチン関連に630億ドル
新型コロナウイルスの研究やワクチンの普及、検査プログラムなどを中心に、医療体制の整備にも資金を追加投入するとのことです。
17歳以下の子どもに関する税額控除を引き上げ
6歳から17歳の子どもに対する税額控除が2000ドルから3000ドルに引き上げられました。一部では、子どもが実際に両親と一緒に暮らしているかどうかの判断が主要な課題になるという指摘もあがっています。
これらが今回の通過した法案の概要です。
逆に通らなかったのは、バイデン大統領が公約として掲げていた、最低賃金の引き上げです。現在の時給7.25ドル(約790円)から同15ドル(約1635円)へ2025年までに段階的に引き上げるというものでしたが、議会予算局が15ドルになれば140万人の雇用が失われるととの試算を出したことなどがあり、今回は見送られる形となりました。
株価や為替に与える影響は?
では実際に今回の法案が株価や為替、その他金融商品にどんな影響をもたらすのでしょうか?順番に見ていきましょう。
手厚すぎる給付
日本とアメリカでは全く状況は異なりますが、少し手厚すぎる感は否めないですよね。
冒頭でも触れましたが、賛成50、反対49という僅差だったのは手厚すぎる給付に対する、野党・共和党の猛反対があったためです。
しかし、米議会は現在、民主党が下院・上院共に議席数の過半数を収めており、圧倒的有利な状況で強引に通した様にも見えてしまいます。
国際通貨基金(IMF)は追加対策が発動されれば、米国の国内総生産(GDP)が今後3年で計5~6%押し上げられると分析しています。
そして、この手厚い給付の大半の行先が「一般家庭」です。例えば、標準的な収入の4人家族で5600ドル(約61万円)もの給付になります。
これらが現在アメリカで巻き起こしている株や暗号資産(仮想通貨)のブームにさらに火を付ける可能性があります。
金余り相場と複雑化する世界経済
では実際に、NYダウ指数の1時間足チャートを見てみましょう。
上院が法案が可決したというニュースが出た6日から急激に上げ続け、2月末につけた史上最高値を突破しました。
続いて、ビットコインのチャートを見てみましょう。
こちらも6日から上げ続けています。今回の法案が期待されていることが分かります。
しかし、その一方で法案通過を受けて、債券には売り圧力がかかり、米長期金利は先日付けた1年振りの高値である1.61%台に乗せる場面もありました。
そして、ハイテク株中心のナスダック指数が大きく下落し、1993年以来のダウ指数との大きな乖離や、それと同時に急激なドル高が進んでいるなど、世界経済が複雑化してきています。
また、1989年の日本の長期金利の上昇が、その後のバブル崩壊を示唆していたことも事実です。
まとめ
今回で、アメリカにおけるコロナ後の緊急財政出動は合計で6兆ドル弱となり、過去に例のない巨額経済対策となります。
「お金の価値はどうなってしまうのだろうか?」と不安に思う方も多いかもしれません。
だからこそ、現金だけを持つのではなく、様々な金融資産に分散投資することでリスクをヘッジしながら「自分の資産は自分で守って作る」という意識が大事だと考えています。
参考サイト
ロイター通信
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-usa-congress-idJPKBN2AZ03D
外為オンライン
https://www.gaitameonline.com/academy01.jsp
時事ドットコム
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021030700052&g=int
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