FOMCや日銀の政策点検の発表などが立て続けにあり、相場全体のボラティリティが高くなってきています。ドル円も高値で推移しており、今後どちらに振れるのか注目を集めています。
そんな中、週明け22日の為替市場でトリコリラの暴落がありました。週明けということで、かなり大きなギャップダウンとなり、驚かれた方も多いのではでしょうか。
今回はそんなトルコリラの暴落はなぜ起こったのか、そして今後はどうなっていくのかを解説していきたいと思います。
トルコリラが一時15%安、15円台から一時12円台まで急落
この日、トルコリラ/円は週末の15円台から一時12円台を付ける-15%の大きな下落となりました。現在は、13.7円前後まで買い戻されています。
引用元:TradingView
これまで、トルコリラ/円は昨年11月に最安値である12.0円前後を付け、その後かなりの勢いで15.2円前後まで戻していましたが、今回の急落で再度下落トレンドに入る可能性があります。
今後、トルコの政治情勢や金利の見通し次第ではさらに、トルコリラ安が進んで、最安値を割る可能性もあるかもしれませんので注意が必要です。
トルコリラの暴落を招いた原因とは?
では、今回の暴落の原因は何だったのでしょうか。ニュースなどでも広く取り上げらており、概要はご存知の方も多いかもしれませんが、ここではその内容を詳しくご説明させていただきます。
エルドアン大統領が中銀総裁を更迭
今回の暴落の主な原因は、トルコのエルドアン大統領が中銀総裁として引き締め政策を続けてきたアーバル氏を更迭したことで、引き起こされました。
これで、エルドアン氏が中銀総裁を更迭するのは2年弱で3度目。アーバル氏は20年11月に就任したばかりでした。
理由としては、金利を下げて景気回復を図りたいエルドアン氏とインフレ抑制のため利上げに踏み切っていたアーバル氏との意見の相違がありました。アーバル氏就任当初はエルドアン氏も「インフレ退治のために苦い薬でも飲む」状態だったのですが、物価安定の効果はすぐに出ず、これ以上の利上げは容認できなくなった模様です。
しかし市場は、利上げを歓迎していました。中銀は、先週の政策会合で政策金利を17%から19%へ引き上げ。市場予想18%に対し、その上をいくタカ派的利上げでしたが、そのおかげでリラ安が回避され15円台まで回復した矢先の出来事でした。
今後も利上げが期待できる中での更迭だったので、ネガティブサプライズとなり大きな下落を呼んだと考えられます。
ロング比率が高まっていた
そんな中、さらなる下落を招いた原因の一つとして、ロングポジションが昨年2月以来の水準まで積みあがっていたことがあげられます。
引用元:Bloomberg
こちらはトルコリラ/円の証拠金取引におけるロングポジションの比率です。昨年2月以来の水準である87.6%までロングが積みあがっており、ギャップダウンで耐えられなくなった投資家のロスカットを巻き込み、さらに下落したのではないかと考えられます。
「ネガティブサプライズ+ロングポジションが膨れ上がっていた」ことから、今回の様な大きな暴落となったのではないでしょうか。
トルコリラの今後の見通しは?
では、トルコリラは今後どうなるのでしょうか。
私はさらに下げる可能性があると考えています。もう一度トルコリラ/円のチャートをご覧ください。
引用元:TradingView
今回更迭されたアーバル氏が就任したのが、20年11月でした。トルコリラはちょうどその頃から回復していることが分かります。更迭に踏み切ったということは、今後エルドアン大統領は利下げに向かうのでしょう。
ということは、この5か月間の上昇を全戻しする可能性も考えられます。さらに安値を割ってくる危険性まであるのではないかと考えています。
また、こちらは23日(火)時点、マネーパートナーズのトルコリラ/円の未決済建玉(赤:ロング、青:ショート)の比率です。
引用元:マネーパートナーズ
90%がまだロングポジションを保持していることが分かります。さらに買い増しやナンピンをした人が多いのかもしれません。今回の暴落もそうでしたが、相場というのは、困る人が多い方に動くというのは、よく聞く話ですよね。
また、今回とは直接の関係はないですが、20日にトルコは「女性への暴力およびドメスティックバイオレンス(DV)防止条約」から脱退することを決め、アメリカやEUからの非難の対象になっています。各地では多数のデモ活動も起こっており、こういった社会情勢の不安からさらにトルコリラ安に向かう可能性もあります。
まとめ
1日で15%の暴落をしたトルコリラ。エルドアン大統領は、市場の期待とは違った方向に舵を切ってしまったようです。さらに社会情勢の不安やインフレに向かう可能性などもあり、かなり危険な状態と言えるでしょう。
たしかにスワップは魅力ですが、元本を減らしてしまっては元も子もありません。こういった時は下手にポジションを持たず、静観するべきと考えています。
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