トルコリラは、今年10月に金利が引き下げられた後、史上最低の水準に落ち込みました。
トルコのリラは今年すでに価値のほぼ4分の1を失っています。
そこで今回は、トルコリラの暴落の原因や今後の見通しについて説明したいと思います。
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トルコリラは、金利を200ポイント引き下げられた後、暴落した
引用元:Bloomberg
10月22日、トルコリラは過去最低値を記録し、インフレが上昇しているにもかかわらず中央銀行が金利を200ベーシスポイント引き下げたことで、さらに暴落しました。
9月の100ポイントの削減に続き、トルコリラはさらに利下げを受けたことで、低迷を続けています。
利下げの後、3.4%下落しており、今年はこれまでに23%下落しており、これがインフレを20%近くまで押し上げたことで、トルコの家計所得を低下させています。
今回の暴落は、トルコの主要野党共和人民党(CHP)のリーダーであるケマル・クルチダルオールが、利下げをエルドアン首相が命じた「国の裏切り」に例えるほどです。
大統領は、信用、輸出、雇用を増やすために金融緩和を促しましたが、ほとんどのエコノミストは、急激なリラ安、高い対外債務、インフレが目標の5%をはるかに上回っていることを考えると、逆効果になると述べています。
通貨が下落するにつれて、トルコ人の生活費は高騰し、食品、エネルギー、その他の輸入品に対する一時的な価格圧力が生まれるため、今年はさらに値下げの余地はほとんどないとされていますが、果たしていつまで暴落は続くのでしょうか?
暴落の原因は?利下げが影響か
トルコ中央銀行が同日、主要政策金利の1週間、金利を2%引き下げ年16%にすると発表しました。
かねて利下げを求めてきたエルドアン大統領の意向に配慮したとみられており、中銀の独立性喪失への疑念は確信に変わりつつありました。
ウォール街の銀行JPモルガンは、年末のインフレ予測を最新の利下げ前の16.7%から19.9%に引き上げ、「銀行がより急な利下げを行うのを見るのは興味深い」と述べており、
さらに、JPモルガンのアナリスト、ヤルキン・セベチ氏は、「このような前倒しの緩和は、インフレを急速に引き下げることは政策の優先事項ではないことを示唆している」と述べました。
エルドアン首相への不信感は強まる
トルコでは2023年6月までに大統領選挙が実施される見込みであり、利下げの背景には世論調査で支持率低下が続いているエルドアン大統領の焦りが見られています。
大統領の支持率は与党支持者の間では8割程度ありますが、他の政党支持者は9割前後が支持したないため、全体で見ると支持が4割、不支持が6割弱となっています。
さらに、エルドアン首相は2年半以内に利下げに反対した3人の総裁を解任し、銀行の信頼性を損ない、外国人投資家を恐怖に陥れました。
ある銀行の外国為替デスクトレーダーは、「外国人投資家の出口取引は継続しており、その変化は見込めない」と述べています。
銀行家たちは、政策緩和にもかかわらず、債券と貸出金利は上昇し続けていると指摘しました。
フランクフルトのコメルツ銀行のアナリスト、ウルリッヒ・ロイヒトマン氏は、「この動きはエルドアン首相の見解と一致しているが、彼の金融政策は単に間違っており、実体経済が通貨によって深刻な打撃を受けるリスクを冒している」と述べました。
ハト派の見通し
リラの低下の多くは、中央銀行がハト派の合図を出し始めた9月の初め以来です。
リラは、いくつかの損失を比較する前に、ドルに対して3%も下落して記録的な9.501ドルになり、今年は22%減少しました。
これは、銀行がハト派のシグナルを出し始めた9月の初めからほとんどの減少が見られています。
利下げは、50または100ベーシスポイントしか予測していなかったハト派の見積もりの2倍も高く実行されたことになります。
トルコリラの今後の見通し。スワップ金利はどうなる?
現状、コロナパンデミックによる不況は落ち着いているものの、金利がインフレ率を下回る実質マイナス金利状態へ再び回帰してしまったことは大きな問題です。
さらに、前回の利下げ開始時とは異なってインフレが進行中であり、
これらを考えると、無理やりの利下げ強行として海外投資家の信頼をすでに失う結果となっています。
トルコのインフレ率は依然として高水準にある
トルコのインフレ率はリラ安を背景に2018年前後から高水準です。
この背景には原油の価格高騰があり、今後の原油価格の動向に沿って、当面は物価上昇傾向が続くとされています。
11月3日に10月のトルコ消費者物価、生産者物価の発表があり、9月の全体の消費者物価上昇率は前年比19.58%へ上昇しましたが、10月はさらに上昇して20%を超えることも予想されています。
さらに、トルコ中銀は四半期インフレ報告では、2021年末のインフレ見通しは、14.1%から18.4%へ大幅に上方修正されました。
カブジュオール総裁は10月21日会合での利下げについて、「現在のインフレ圧力は一時的であるために利下げを行い、今後の2か月でどの程度の追加利下げ余地があるかを検討する」と述べました。
中銀総裁の発言からは当面して追加利下げを急がない印象を受けますが、物価上昇が落ち着く兆しがあればさらに追加利下げしてゆく姿勢であることが改めて示されています。
エルドアン大統領が10月21日の利下げ幅では満足していないとすれば、利下げ圧力がさらに増して11月18日の会合でのさらなる利下げもあり得るということになります。
インフレ進行なら利下げ批判的なリラ売り圧力も強まりやすいと懸念が予想されます。
まだまだ暴落の要因は継続する可能性があります。
スワップ金利への影響
トルコリラはスワップ金利というものがあり、新興国通貨と呼ばれており、高金利(19%)なのが特徴的です。
日本の政策金利は0.10%であり、かなり高い水準であることがわかります。
1日の終わりに、FXでは、2国の間の差でスワップポイントが得られます。
スワップポイントを得るには高金利のトルコリラを買い、低金利の日本円を売る必要があります。
そのため、レートがスワップポイントで得られる金額以上に大きく下落した際は、高金利通貨に投資するメリットがなくなってしまいます。
リスクコントロールに慣れていない初心者は、相場の下落が起こった際に資産の大部分を失ってしまう危険もあるため、今回のような暴落時には注意が必要です。
トルコリラ暴落のまとめ
トルコは経済だけでなく財政状況が悪化しており、資金流出が継続している中、長期的に下落基調が続いている状況です。
さらに、大統領の信用問題に加え、世界的なインフレ懸念や資源高、サプライチェーンの混乱などもトルコリラの低迷につながっている印象です。
トルコの8月の経済状況はプラスであり、黒字を確保しましたが、ここがピークとなり、その後低下に向かいました。
このような往来とは異なるインフレ局面でのマイナス実質金利の選択で市場の信頼回復を得るのが、難しくなってきています。
今後の影響要因としては、以下のようになっています。
- 11月3日 : 10月 消費者物価指数
- 11月4日 : 週次外貨準備高
- 11月10日 : 9月 失業率 (8月 12.1%)
- 11月11日 : 9月 経常収支 (8月 +5.28億ドル)
- 11月18日 : トルコ中銀金融政策決定会合
引き続き、トルコリラの動向やトルコの経済情勢に注目していきましょう。
参考サイト
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