2018年9月13日に、トルコリラの中銀が利上げを発表しました。
これで、トルコリラの政策金利は24%に上昇したことになります。
この、急な利上げの背景には、いったいどのようなことがあるのでしょうか。また、トルコリラの今後の相場はどうなるのでしょうか。今後も投資対象として、トルコリラは有望なのでしょうか。解説していきたいと思います。
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トルコリラは利上げを発表 政策金利は24%に
トルコリラは、政策金利を17.75%から24%に引き上げました。実に6.25%もの利上げになります。8月中旬に、政策金利よりも高い金利で市中銀行に資金供給を行う裏口利上げを行っていましたが、それを加味しても4.75%の利上げとなっています。
大幅に金利を上げたことで、トルコリラは買いに動いており、現在、トルコリラは1トルコリラ=18円を超える水準まで回復しています。
(出所:外為どっとコムトルコリラチャート)
実は、この利上げを巡っては、中央銀行と大統領の間で、ひと騒動ありました。
エルドアン氏は、利上げには否定的な旨のコメントを行っていました。
これまでも、エルドアン氏は、娘婿を経済担当大臣に起用するなど、政治を私的利用しているようにも見えました。
そういった側面もあり、トルコの通貨に対する信用は毀損していました。そのエルドアン氏が、利上げに対して反対の姿勢をとることで、トルコ中銀は、利上げを行わないのではないか、という観測もありましたが、今回利上げが行われ、トルコ中銀の独立性が保たれたことで、トルコリラの信用が増え、リラ高円安に動いた形になります。
トルコリラはまだ上がらない?楽観視がまだできない理由とは?
では、トルコリラは、一安心で、これからはトルコリラ高の方向に向かっていくのでしょうか。
個人的には、その可能性はまだ低いのではないか、と感じています。なぜなら、トルコの景気は、本質的には回復していないからです。
トルコリラ安になっている背景として、トルコリラの経常収支の悪化がありました。経常収支が悪化すると、一般的には通貨安の方向に動きます。もちろん他にも要因がありますが、これは為替の動きの主要因の1つになっています。
トルコは6月に、選挙対策も含め、大きな景気刺激策を行いました。そのため、6月の経済成長率は、5%以上と高い水準になっていました。
しかし、この景気刺激策のために、大量に通貨発行を行ったことも、トルコリラ安の要因の1つになったといわれています。
また、7-9月期のGDPの成長率は、前回の反動で、厳しいものになる可能性もあります。本質的な経済政策が打てていない中、付け焼刃の施策ばかりでは、通貨はなかなか回復しません。そういった意味では、トルコリラはまだ楽観視できる水準ではないでしょう。
もう1つ、トルコリラが楽観視できない理由があります。それは、「トルコ人が、リラ売り、ドル買いをしている」という事実です。
今回、トルコの利上げが発表された際、トルコリラはいったん大きく売られました。これは、トルコ人が、実需のリラ売り、ドル買いをしているからです。トルコ人が利上げから1時間で10億ドル分のトルコリラ売り・ドル買いをしたという情報もあります。
自国民が自国通貨の売りを続けているうちは、本格的なトルコリラ高を遅らせる1つの要因になっているといえるでしょう。
とはいえ、プラスのニュースもある?トルコリラの買い時はいつか?
とはいえ、マイナスのニュースばかりではありません。もちろん、プラスのニュースもあります。
まず、トルコ中銀の独立性が保たれたというのは大きなニュースでしょう。
エルドアン氏の圧力に屈さなかったというのは、国際的にもプラスの評価になっています。
もう1つ、よいニュースがあります。それは、米国との関係改善が期待されるということです。
実は、トルコ・イラン・ロシアの三国が、シリア問題を解決するため、8月に会談を行いました。
イラン・ロシアはシリア政府軍側に、トルコは反政府勢力を支援しているのですが、この会談では、ロシア・イラン側と、トルコ側の交渉が決裂したといわれています。そのため、トルコは、再びアメリカに譲歩する可能性が出てきたのです。
もともと、トルコリラ悪化の要因として、一人の牧師の釈放を巡った、米国との関係悪化というのがありました。しかし、ここにきて、アメリカ側に譲歩せざるを得なくなったトルコ側は、牧師の釈放をする可能性が大きく出てきているのです。
アメリカからの経済制裁が緩和されれば、トルコ経済にとってはプラスに働く可能性が大きくあります。これは、トルコリラ高になる要因の1つといっていいでしょう。
まだまだ安心はできない、トルコリラ投資
トルコリラは、大きな利上げを行ったものの、経済のファンダメンタルは回復しておらず、また、トルコ国民が自国通貨を売っているということから、長期的にトルコリラが回復していくには、まだ時間がかかるでしょう。それどころか、さらにトルコリラ安に振れることもありえると考えています。
しかし、プラスのニュースもあります。トルコ中銀の独立性が保たれた上に、アメリカとの関係改善の見通しが見えてきたことは、トルコ経済にとっては間違いなくプラスになるでしょう。
現在、トルコリラはリラ高に触れていますが、投資戦略として、「買い」のサインを出すのは早いと思います。むしろ、今は、注意深く市場を見守るときではないでしょうか。
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