WTI原油先物価格がマイナスになった理由を徹底解説

原油先物価格マイナス

原油で何が起きているのか?

コロナウイルスが世界中で猛威を振るっています。

感染者数、死者数ともに例年にはない規模のパンデミックとなっており、多くの都市がロックダウンを余儀なくされています。

人体への影響もそうですが、経済に対しても相当な影響が出ると言われています。実際、世界経済の落ち込みは大きく、2020年の世界経済の見通しはマイナス成長になる、と言われています。

実際、世界の株価の主要指標は、2月から3月にかけて大きく下落しました。

そんな中、今、最も注目を浴びているのが、原油でしょう。WTIの原油先物価格が、4/20にマイナス価格となりました。原油の価格がマイナスになるのは史上初めてのケースであり、市場は一部混乱をしています。

なぜ価格がマイナスになるのか、そして、今、原油で何が起きているのか、さらに、今後の見通しについて解説します。

WTI原油先物価格がマイナスに

20日の夜、原油市場は大きな混乱が起こりました。

史上初めて、原油価格がマイナスになったのです。

原油価格は一時マイナス40ドルをつけ、その日の終値はマイナス37ドルと、「例を見ない」価格での取引となりました。

この原油価格の下落は、「逆オイルショック」とも呼ばれ、市場関係者や投資家にも大きな驚きを与えることになりました。

原油先物価格マイナス
(出所:Bloomberg )

WTI原油先物価格が決まるロジック

まず、原油先物価格が決まる方法について解説します。

そもそもWTI原油先物とは、いったい何でしょうか。

原油については、様々な国が生産をしており、価格もバラバラです。

WTIとは、原油の中でも、西テキサス地方の中質原油を指しており、この地方の原油は含有硫黄分が少なく軽質で、ガソリンや軽油が多く採れるといった特徴を持っています。

この先物商品がニューヨーク・マーカンタイル取引所で取引されており、市場への参加者も多いことから、代表的な原油指標の1つとなっています。

原油指標としては、北海ブレント石油の先物もよく知られています。

そして、あくまでもWTI原油先物というのは、先物と呼ばれるオプション取引となります。

先物取引とは、すごく簡単に説明すると、「将来のX月X日に、商品をいくらで買うことができる取引」になります。

たとえば、原油の先物商品を10ドルで買って満期まで保有すると、満期時に原油が受け取れる形になります。

満期時の原油価格が5ドルであろうと20ドルであろうと、10ドルで買ったとして受け取ることができるのです。

では、この先物価格は、どのように決まるのでしょうか。

一般的に、先物価格は現物価格より高くなります。高くなるのには理由が2つあります。

1つは保管料です。たとえば、ある企業が、5月1日に原油を使う予定があるとします。

3月30日現在の原油の現物価格が10ドル、原油の1か月の保管料が5ドルだとします。

そうすると、4月30日期限の原油先物価格は、単純に計算すると15ドルになります。

先物価格が15ドル以上であれば、企業は先物を買う必要がありませんし、15ドル以下であれば、現物よりも先物を買った方が、経済合理性があると言えます。

もう1つが、金利です。先物というのは証拠金取引となり、たとえば10ドル証拠金を入れれば、100ドル分の取引が可能になります。

一方、現物取引の場合は、100ドルの現金が必要となり、それを借り入れる場合、金利が発生します。一般的に、先物価格は金利を反映したものとなっています。

もちろん他にもいろんな要因があるのですが、理論価格にはこのように、2つの要素が大きく影響していることを理解しておけばよいでしょう。

なぜ先物価格がマイナスになったのか?

では、なぜ、今回、原油の先物価格がマイナスになったのでしょうか。

まずは理論的な部分から、解説をしたいと思います。

まずは、先物取引における「権利」と「義務」の話です。

オプション取引の中には、買い手に「権利」があり、売り手に「義務」が発生するもの、買い手、売り手ともに「義務」が発生するものがあります。

売り手が権利を持つもの、買い手売り手ともに権利を持つものは存在しません。(買い手がオプションとして価格を支払っているため、基本的には買い手が強い取引になります。)

今回、マイナスになった原油先物は、5月限という商品になり、5月の末日に受け渡しが行われる商品になり、買い手、売り手ともに「義務」が発生する商品になります。

つまり、買い手は、オプション価格で原油を必ず引き取らなければなりません。

その期限の取引の最終日がアメリカ時間で4月21日だったのです。(現在は6月限という、6月末日を受け渡し日とした先物が取り引きされています。)

現在、石油の需要は低下しており、一方で供給は増えています。(こちらの要因については後述します。)

そのため、原油が余っている状況です。

WTI原油の場合、オクラホマ州にあるクッシングという場所で原油の受け渡しが行われ、そこからパイプラインを通じて各地に原油が運ばれるのですが、現在、クッシングのタンクは貯蔵量の限界を迎えているようで、また、需要が少なくなっているため、パイプラインを使って輸送することもできない状況にあるようです。

そのため、保管するにしても膨大なコストがかかることが想定され、引き渡される前に、タダでもいいから先物を売ってしまおう、という判断をする投資家が多くあらわれた、というのが実情になっています。

お金を渡してでも、原油を引き取ってもらった方が、トータルでの損失は小さくなる、という判断をしているわけです。

石油の需給を巡る構造的な問題点

今回、原油先物価格がマイナスになったのは、上記のような事情や先物の特性であり、ある意味で特殊事項と言えるでしょう。

しかし、そもそもの原因となっているのは、原油の需給バランスが崩れていることです。

なぜ、需給バランスが崩れているか、その辺についても少し触れていきたいと思います。

コロナウイルスによる経済活動の停滞

まず大きな要因になっている、需要面から見ていきましょう。これはもちろん、コロナウイルスの影響が大きくあります。

中国から始まったこのウイルスの影響は、全世界に大きな影響を与えています。

世界的にGDPの見通しは暗く、アメリカ、ヨーロッパ、日本では、2020年1-3月期の見通しはマイナス、4-6月期は2桁のマイナスが予想されています。

新興国においても、正確な見通しこそ出ていないものの、同じような状況であることは変わりないでしょう。各種経済指標も大幅な悪化が予想されています。

その場合、原油の消費量そのものが減ります。原油の多くは工業で使われます。

経済が止まると、多くの場合工業生産も低下します。さらに今回は、コロナウイルスによる影響で、そもそも物理的に工場が止まってしまう、というケースも多くありました。また、航空業界や鉄道業界の減便も原油の消費抑制に輪をかけています。

こういったことが重なり、需要が落ちました。

過剰供給が続く

一方、供給面でも問題が出てきています。

これは、ひとことでいうと、過剰供給になります。

以下が原油の生産量の推移となります。

原油産出国ランキング

(出所:資源エネルギー庁HP )

これを見ると、世界のエネルギー生産量は、ここ数年右肩上がりで成長しており、かつ、北米、中東、ロシアが大きなプレイヤーであることがわかるでしょう。

そして、北米も、中東も、ロシアも、生産量を増やしていることが見て取れるかと思います。

そもそものトレンドとして、原油は生産過多な状況にあるのです。

もともと、石油は、OPECという中東が中心となっている機構が、価格をコントロールするために、生産量の調整を行ってきました。しかし、アメリカのシェール革命に代表されるように、OPEC以外の原油の生産量が増えてきたのです。

そのため、どれだけOPECが生産量を調整しようとしても、価格が上がりづらい、という状況が続いていたのです。

コロナショックで供給面の問題が顕在化

今回、コロナショックが起きたことで、需要が一時的に落ち込み、供給の問題が顕在化してきたことで、原油価格が大幅に落ちていると考えられます。そして、減産をしようとしても、足並みがそろわないのが事実なのです。

今後の原油価格の見通しは?

では、今後の原油価格は、どのような見通しなのでしょうか。マイナスは一時的で、復調するのでしょうか。

4月22日現在、価格は10ドル代で推移しています。

結論からいうと、原油先物価格は、たびたびマイナスになりえるのではないでしょうか。1つは需要面、もう1つは供給面の問題があるからです。

需要面については、コロナウイルスが落ち着くまでは、戻ってはこないでしょう。コロナがいつ終息するかは、現状誰にもわかりません。逆に言うと、コロナの影響があるうちは、原油は余りやすい傾向にあります。

もう1つは供給面です。供給を減らすには、各国が足並みを揃えることが前提になります。しかし、簡単には足並みはそろわないでしょう。特にアメリカが足並みを揃えるのは難しいのではないでしょうか。

なぜなら、OPEC諸国のような、原油に経済の大部分を頼っており、国がコントロールしやすい国とは異なり、北米は、ある程度自由競争の原理が働いているからです。トランプ大統領は、原油業者を守るような発言をたびたびしていますが、価格を上げることは他の産業にダメージを与えることを意味します。アメリカは世界最大級の産油国かつ石油消費国であり、価格のバランスをとるのは非常に難しいのです。

そのため、6月限の期限直前には、このようなことがまた起こり得ても、なんら不思議ではありません。世界的に大きな動きがない限り、短期的には原油価格は引き続き下落傾向にあるのではないでしょうか。

コロナショック?それとも?原油で何が起きているのか? まとめ

今回、原油先物価格がマイナスになったことが、大きな話題となりました。しかし、先物商品という性質である以上、需要と供給に大きなズレが出た場合、マイナス価格にはなり得ます。

今回は、「原油のタンクがいっぱいで受け渡しができないリスクがある」「一方で需要は少ない」ことから、マイナス価格になりました。

一方で、コロナショックによる需要減少と中東、ロシア、北米の競争による供給過多は、今後も構造的な問題として残っていくでしょう。原油先物価格がマイナスになることは、今後たびたび起こり得るかもしれません。

しばらくは、原油先物価格を注視したいですね。

次回はこういった原油相場で、投資家として抑えるべきポイントを紹介します。

逆オイルショックでの投資スタイル【原油先物を空売りする方法は?】

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