原油価格はなぜ上がっているのか?上昇の理由と今後の見通しについて

昨今、原油高が話題になっています。ガソリンの値上げなど、悪いニュースのように聞こえますが、投資家の側面から見ると、決して悪い話ばかりではありません。

参考:帰ってきた「原油高」――再びの上昇WTI、そして“恩恵銘柄”

今回は、昨今の原油高の背景と、投資家として、どのように解釈し、行動すべきかについて、解説していきたいと思います。

※あくまで実際の投資は自己責任でお願いします。

原油価格の仕組みについて理解する

まずは、原油価格が、何に影響されるかについて、簡単に整理したいと思います。

原油というのは、かつては、埋蔵量に限界があり、あと何年で地球に石油がなくなる!という話もありました。

しかし、それはもはや過去の話です。現在は、むしろ過去より埋蔵量が増えているのです。これはなぜかというと、技術の発展により、今までは採掘できなかった場所での採掘が可能になっているからです。

現在、原油は、採掘コストと需給の影響で価格が決まります。

シェールオイルは、1バレルあたりの採掘で、採算が合うのが、50~60ドルと言われています。

つまり、原油価格が60ドルを超えてくると、シェールオイルの採算がとれるため、原油の供給が増えます。それにより、原油価格は下がります。

一方、需給は基本的には景気で決まります。家庭用のガソリンや灯油などもありますが、石油の需要を決めるのは産業活動です。つまり、景気がよければよいほど、産業は活性化していると考えられるため、原油価格は上昇方向に働くのです。

他にも、政治的要因が大きく関与します。最も大きく影響するのは、OPECの国々です。OPECは、定期的に、今後原油を増産するのか、減産するのかの方向性を定めています。

これは、原油価格を安定させるためのものですが、各国が従うかどうかの強制力がないため、必ずしも期待通りの生産になるかどうかはわかりません。さらに、昨今では、OPECに入っていない国の産油量も増えています。これが原油価格を複雑なものにしています。

2018年今回の原油価格の背景は?

ここで、原油価格を見てみましょう。一般的な原油価格と呼ばれるのは、WTI先物の価格になります。

参考:WTI原油先物 金先物価格 リアルタイムチャート

2014年に大きく下落した原油価格は、徐々に戻しつつあります。

そもそも2014年に大きく下げた理由は、イランへの圧力の緩和と、OPECの減産がうまく行かないという見通しでした。また、アメリカのシェール革命も、原油安に影響を与えたといえるでしょう。

ここで大きく下げた原油価格は、その後、OPECの減産もありながら、徐々に値を戻している最中だと言えるでしょう。

昨今、原油高が話題になっているのは、久しぶりに70ドルに戻したからではありません。

なぜなら、原油は、100ドル超の水準にあったからです。今もなお、「記録的な原油高」ではないのです。

今回、話題になっているのは、やはり政治的な理由からです。4月に、米国がシリアを攻撃しました。中東の緊張は、原油高に働きます。さらに、イランの情勢も不透明であり、現在、中断されているイランへの経済制裁が、再開される可能性もあるのです。もちろんイランは大きな産油国なので、もし経済制裁が起きた場合、原油高に働く可能性もあるのです。

さらに、南米のベネズエラが、経済危機に陥っています。原油依存体質の経済でしたが、国営の石油会社の経営自体がうまく行っておらず、高いインフレと食料不足に悩まされているそうです。

ベネズエラは、すでに原油の生産量が下がっており、この経済危機が続き、国営の石油会社が破たんした場合、さらなる原油の生産量の低下を招きます。ベネズエラもOPEC加盟国であるため、ベネズエラの減産も、原油価格に影響を与えることは間違いないでしょう。

今後、原油価格はどうなる?シェールガスの影響は?

では、今後原油価格は、どのように推移するのでしょうか。

個人的には、引き続き、原油価格はゆるやかに上昇すると思います。

しかし、以前のような、100ドル越えというのは、ないのではないでしょうか。

最も大きな理由は、「シェールガス」です。原油が70ドルを超えると、明らかにシェールガスで利益を出すことは可能です。

PECの原油量が減っても、シェールガスが増えるため、総量としては一定量の石油が供給されます。このため、原油価格には、上限があると考えられます。80ドルを超えてくると、この上限は意識されるのではないでしょうか。

また、今出ている、政治的悪材料も、結果としては何も起こらない可能性もあるわけです。

さらに、安心感から、原油価格は戻す可能性はあります。しかし、OPECの減産が続く限りは、大きく下げることも、またないでしょう。ある程度まで上昇した後は、60~80ドルの間くらいで、BOX相場を描く可能性もあります。

原油価格が上がる材料はあるものの、上昇は限定的

原油価格は、需給と政治的要因で決まることが大きいコモディティです。需給については、供給サイドとして、シェールオイルのコスト、需要面としては、世界の景気が、価格に大きな影響を与えています。政治面では、OPECの価格方針が同じく影響を与えています。

現在は、シリアやイランなどの中東情勢の緊張、およびベネズエラの経済危機など、政治面での緊張が高まっているため、原油価格は上昇傾向にあります。今後も上昇を続けるかもしれませんが、価格があがるとシェールオイルの供給が増えてくるため、価格はある程度のところで抑えられるでしょう。

しばらく価格が上がった後は、BOX相場になる可能性もあります。

後編では、原油価格で影響を受ける産業と、投資家として、原油とどう向き合うかについて、解説したいと思います。

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