前回の記事では、2019年に5%利回りを目指すためのソーシャルレンディングについて解説しました。
個人的には、ソーシャルレンディングは、株ほど値上がり、値下がりのリスクがなく、相場の影響を受けない、かつ、ある程度の利回りが見込めるということで、ポートフォリオのバランスをとるために、組み込む価値のある金融商品だと思っています。
前回の記事⇒利回り5%超のソーシャルレンディング銘柄でおすすめはどれか?
ここまで日本株、ETF、投資信託、REIT、そしてソーシャルレンディングと解説をしてきました。
いよいよここからは、海外投資について解説していきたいと思います。海外投資の王道である米国株、それも、インカムゲインとして人気がある配当貴族・配当王について解説したいと思います。
Contents
図で見る、米国株のリターンの高さ
私は投資対象として米国株を押しています。実際、私のポートフォリオのメインは米国株です。
まず、そもそもなぜ、米国株に投資すべきかどうかというところから、再度解説したいと思います。日本に住んでいれば、日本株のほうが、なじみがあるのは当然ですし、投資しやすいのも日本株ですよね。
でも、なぜ米国株に投資すべきなのか、それはリターンの高さです。過去50年の、日経平均、およびS&P500のリターンを見れば、それは明白です。以下のようなデータになっています。
(出所:Yahoo! Finance )
見ての通り、日本株が約9.6倍になったのに対し、米国株は22.8倍になっています。
そして、もう1つ特筆すべきはその波動で、日本はバブル時がピークとなっていますが、米国株は今がピークになっています。10年、20年というスパンで見れば、強く成長してきたのが米国株なのです。
今後、日本は人口減少、高齢化と、マクロ経済的には決してプラスとはいえません。
一方、アメリカはいまだ若年人口が増え続けています。イノベーションもアメリカ発のものが多く、しばらく世界一の経済大国であることには間違いないでしょう。投資の原則は、「今後伸びるところを買え」です。そういった観点から、私は、アメリカの株式を勧めているのです。
シーゲル教授の「高配当再投資戦略」とは?
米国株投資を語るうえで、避けて通れないのが、ジェレミー・シーゲル教授の「株式投資の未来」という書籍です。多くの米国株投資家に人気がある本です。
本の紹介はさておき、この本には非常に重要なことが書いてあります。
それは、「S&P500採用銘柄のうち、ヘルスケアや生活必需品など、高配当の銘柄に投資し、配当再投資を続けた方が、トータルのリターンは高くなる」ということです。
なぜなら、これらの高配当銘柄は、不況時でも減配しないことが多く、そのため、下落相場で株価が低迷していても、その配当金による再投資を行うことで株数を増やせる。
そしてそうなると、上昇相場に転じた時の上がり幅が大きい、ということです。本の中では、実際にデータを使って、そのことを証明しています。日本でも、シーゲル流の高配当再投資戦略は人気になっています。
これは、なかなか減配しない、株主重視の米国株だからこそできる手法の1つです。日本株だと、すぐ減配や無配をするので、こういった風にはいきません。
もちろん一時的な視点で見ると、アマゾンやグーグルなどの伸び率にはかないませんが、長期的に見ると、有効な投資であることには、間違いないでしょう。
高配当戦略で知っておきたい、「配当貴族」と「配当王」
では、実際に高配当戦略をとろうとするとき、どういう銘柄を選べばよいのでしょうか。以前も紹介しましたが、その大きなヒントとなるのが、「配当貴族」「配当王」というキーワードになります。
配当貴族、配当王は、連続増配年数に注目した指標になります。連続増配を行っているということは、毎年、1セントでも、確実に配当金(株主還元)を増やしている会社です。
こういった会社は、配当金が増配することが期待されて株価を形成していますし、また、その株主還元の姿勢が評価されて、今の株価になっています。減配をすると、大きく株価を毀損するリスクもあるので、ちょっとやそっとじゃ減配しません。よって、これからも、これらの銘柄では増配が期待できるのです。
アメリカでは、連続増配が25年続くものを配当貴族、50年続くものを配当王と呼んでいます。
2019年の配当貴族、配当王は?
では、2019年、最新版の、配当貴族、配当王銘柄を紹介しましょう。
配当王は、全部で28銘柄あります。連続増配年数が最も長いのは、アメリカン・ステイツ・ウォーターという、アメリカで水道事業を行う会社になります。
連続増配年数は64年なので、1955年からずっと増配を続けていることになります。現在の配当利回りは1.64%です。株価も上昇しているため、配当利回りはそこまで大きく見えませんが、たとえば1980年の1月に1.83ドルでこの銘柄を買っておけば、配当利回りは90%を超える形になっているのです。
配当王は、公益や資本財、そして、一般消費財などがセクターとしては目立ちます。コカ・コーラやP&G、3Mなどは、日本でもなじみのある銘柄ですね。
配当貴族銘柄は103銘柄あります。日本で連続増配が25年以上なのは、花王の1社のみです。その観点でも、アメリカ株の株主還元の姿勢わかるのではないでしょうか。
配当貴族銘柄になると、金融なども含め、いろいろな業種が出てきます。とはいえ、やっぱりハイテク銘柄等は少ないのが事実ですが。
配当貴族・配当王の中のおすすめ銘柄は?
株主還元が積極的な米国では、配当王・配当貴族だけでも131銘柄あるのです。もちろんすべての株を買うことはできないですし、リスクとリターンの関係から言っても、あまりおススメはできません。
では、どういった銘柄を選べばよいのでしょうか。選び方と、おすすめの銘柄を紹介したいと思います。
増配年数にはこだわる必要なし
まず1つは、このレベルまでくると、増配年数にはこだわる必要はないと思います。もちろん、2年連続増配と3年連続増配であれば、3連続増配のほうが、信頼度が高いと言えるでしょう。
しかしながら、32年連続増配と、33年連続増配であれば、そこまで差はもはやないのではないでしょうか。いずれの企業も、長い歴史の間、増配を繰り返してきた、というイメージを持つのではないかと思います。よって、配当貴族銘柄であれば、増配年数には、あまりこだわる必要はないと考えます。
利回り:一つ目安になるのは、米国債の利回り
では、何を重要視すればよいのでしょうか。それはやはり、リターンではないでしょうか。現在、最も無リスク資産に近いとされる、米国債のETFである、BNDの分配金利回りは、2.75%になっています。
BNDの利回りが3%を超えた時、高利回り株から資金が流出し、米国債に資金が流れました。ということで、やはり、配当利回り3%というのが、一つの目安になるのではないでしょうか。よって、今回も、配当利回り3%以上の銘柄を選びたいと思います。
増配率:今後、長期保有したときに、どれくらい配当があがるかどうか
もう1つポイントとして見たいのは、増配率です。増配率とは、●年で配当金がどれくらい増えたか、という指標になります。1年、3年、5年、10年などで見ることが多くあります。
今回は、最もベーシックに使われる指標である、5年増配率(トータル)で見たいと思います。これは、年平均ではなく、5年間で、どれくらい増配したかをみる指標になります。
2018年末現在、配当貴族銘柄の平均増配率は、単純平均で14.7%となっています。よって、少なくとも、増配率15%以上の企業は、今後も増配する余地が高いことが窺えます。
配当性向:配当余力はどれくらいあるか
また、配当性向も重要です。配当性向とは、配当金を一株あたり利益(EPS)で割ったものであり、その企業の利益のうち、配当金にどれだけまわしたか、つまり、今後も増配する余地がどれくらいあるかを見る指標になります。
たとえば配当性向が100%を超えている場合、自分の利益以上に配当を出していることになります。こういったことが長く続かないのは、簡単にわかると思います。配当性向がマイナスになるということも、赤字なのに配当を出しているということなので同じですね。配当性向が0~90%の中に納まっているのが適切な範囲といえるでしょう。
PER:配当銘柄は、割安な時に買いたい
最後に見たいのが、PERです。PERは、配当とは直接関係はありませんが、それでもやっぱり、安定的な配当を狙うのであれば、割安なときに買いたいですよね。
2019年のS&P500の予想PERは15倍前後と言われています。もちろん業種により差はありますが、予想PER15以下の企業は、比較的割安(=お買い得)と考えてよいのではないでしょうか。
上記の条件でスクリーニングした結果、残ったのは以下の16社になります。配当利回り順で並べました。
会社名 | Ticker | セクター | 増配年数 | 配当利回り(%) | PER | 5年増配率 | 配当性向 |
Altria Group Inc. | MO | Consumer Staples | 49 | 6.48 | 12.6 | 29.96 | 0.816 |
Universal Corp. | UVV | Consumer Staples | 47 | 5.54 | 13.02 | 23.3 | 0.721 |
People's United Financial | PBCT | Financials | 26 | 4.85 | 11.83 | 27.26 | 0.574 |
United Bankshares Inc. | UBSI | Financials | 44 | 4.37 | 13.13 | 24.24 | 0.574 |
Leggett & Platt Inc. | LEG | Consumer Discretionary | 47 | 4.24 | 14.34 | 22.95 | 0.608 |
Eaton Vance Corp. | EV | Financials | 38 | 3.98 | 10.63 | 21.8 | 0.423 |
Target Corp. | TGT | Consumer Discretionary | 51 | 3.87 | 12.69 | 21.15 | 0.491 |
Old Republic International | ORI | Financials | 37 | 3.79 | 7.37 | 23.47 | 0.28 |
Consolidated Edison | ED | Utilities | 44 | 3.74 | 3.47 | 20.65 | 0.13 |
Community Trust Banc. | CTBI | Financials | 38 | 3.64 | 12.61 | 18.41 | 0.459 |
Archer Daniels Midland | ADM | Consumer Staples | 43 | 3.27 | 11.32 | 17.76 | 0.37 |
Arrow Financial Corp. | AROW | Financials | 25 | 3.25 | 13.45 | 17.98 | 0.437 |
Black Hills Corp. | BKH | Utilities | 48 | 3.22 | 6.25 | 16.74 | 0.201 |
Nucor Corp. | NUE | Materials | 46 | 3.09 | 8.59 | 18.23 | 0.265 |
Cullen/Frost Bankers | CFR | Financials | 25 | 3.05 | 13.26 | 16.52 | 0.404 |
T. Rowe Price Group | TROW | Financials | 32 | 3.03 | 12.31 | 15.45 | 0.373 |
1位のアルトリアはタバコ株で、最近のタバコ規制等の影響で株価は低迷していますが、その結果利回りは高まっています。配当性向が85%を超える点だけが気がかりですが。
2位のユニバーサルもタバコ商社になりますね。映画会社のユニバーサルとは違う会社になります。
3位のピープルズユナイテッドファイナンシャルは、米国北東部を拠点とする地銀ですね。以下、意外なことに、金融が上位を占めました。
まとめ
配当貴族・配当王とは、それぞれ25年、50年連続増配している、アメリカのS&P500に採用されている、増配、かつ、大型優良企業の集まりになります。アメリカは日本に比べ株主を重視した資本政策を行っており、かつ、連続増配しているということは、それだけ株主を重視しているということなのです。
アメリカでは配当貴族・配当王合わせて、131社と、多くの会社が25年以上増配しています。我々としては、連続増配しているかどうかに加えて、配当利回り、5年増配率、配当性向、PERなどを勘案して、投資企業を決めたいですね。
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