前回の記事では、2019年に5%利回りを目指すために、どのような日本株がおすすめかについて解説しました。
最近の株安もあり、相対的に配当利回りが高まっており、配当的には、投資妙味が高まっている銘柄も多くあります。利回り5%以上の銘柄が47社、3%以上の銘柄だと873社もあります。
しかし、ただ配当が高いだけで、安易に飛びついてはいけません。
なぜなら市場価格が配当に比べて割安になっているところは、たいてい何か落とし穴があるからです。
なので、ただ配当利回りではなく、連蔵増配年数や、配当性向などを見て、総合的な判断の元投資を行うことを勧めています。
前回の記事⇒配当利回り3%超と高く、連続増配年数が10年以上の日本株銘柄に投資する戦略
しかし、連続増配年数10年以上、配当性向0~90%、配当利回り3%という基準で見ると、日本株のうち7社しか該当するものがありません。
7社に集中投資するのは、社数が少なくてリスクが高い、そう考える人も多いのではないでしょうか。
それであれば、高配当を対象にした、ETF、投資信託のほうが、手間や銘柄選択の面からも、安心できるかもしれません。今回は、日本株を対象としたETFについて解説したいと思います。
Contents
意外と多い日本株高配当のETF
日本人は、昔から、インカムゲインが好きだと言われています。
そのため、高配当をうたった日本株のETFというのは、実は結構多くあるのです。有名なところで、この6本があります。
- 1478 iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF
- 1489 日経高配当株50ETF
- 1494 One高配当日本株
- 1577 日本株高配当70ETF
- 1651 ダイワTOPIX高配当40
- 1698 上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100)
ETFのメリットは「自動でリバランスしてくれるところ」
ETFを使うメリットを1つお伝えしましょう。ETFを使うことで、自動で必要な銘柄をピックアップしてくれます。
たとえば、株価が上がりすぎて配当利回りが小さくなってしまった銘柄を、自動的にはじいてくれて、利回り的においしい銘柄を再度ピックアップしてくれるのです。
個別株であれば売買手数料が発生しますが、ETFの場合、ほったらかしで、なんなら「寝かせる」だけで自動リバランスを行ってくれるのです。
自分でリバランスする手間をかけたくない、または、どの高配当銘柄を選んだらよいかわからない、という人こそ、ETFを使った方がよいのかもしれません。
デメリットは、株主優待が使えない、というところでしょうか。
日本株の面白いところは、株主優待というメリットがあることです。
これは個別株投資の特権で、ETFや投資信託では得ることができません。
私は基本的に株主優待には反対ですが、もし興味があるというのであれば、個別株のほうがいいかもしれませんね。
それぞれのETFの特徴を紹介
でも、実際のところ、どのETFが良いかは、なかなか判断がつきづらいですよね。
なので、それぞれのETFの特徴を紹介したいと思います。
1478 iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF
iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETFの基本情報は以下の通りです。
- コード 1478
- 名前 iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF
- 利回り 3.20%
- 構成銘柄数 34
- 経費率 0.19%
- 純資産総額 38.807(十億)
- ベンチマーク MSCIジャパン高配当利回りインデックス
- 運用会社 ブラックロック
(利回り、純資産総額データは直近のもの、bloombergより引用、以下同様)
銘柄の名前の通り、MSCIジャパン 高配当利回りインデックスというベンチマークと同じパフォーマンスを見せれるような運用をしています。
銘柄数は34と、多いわけではないですが、十分に分散効果は聞いています。経費率も0.19%と、高配当ETFの中では比較的低い方だといえるのではないでしょうか。
iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETFのリターンは以下のようになっています。
(出所:Bloomberg )
オレンジの線がiシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF、青が日経平均になります。
はじまって3年と少しのファンドになりますが、リターンは設定来で-3%程度になっています。3年のトータルリターンは-0.09%で、ほぼ元本どおり、インカム分がプラスになっている程度でしょうか。
日経平均と比べてみても、リターンはあまり良くありません。
なぜなら日経平均を押し上げている、値がさ株と呼ばれるファナックやファーストリテイリングのような銘柄が入っていないからです。とはいえ、これから市場が落ち込むとすると、値下がり幅は底支えされるかもしれません。
配当金込みのリターンは以下のようになっています。これで見ると、日経平均に比べて大きな乖離は出ていないですね。
(出所:ブラックロック )
構成銘柄は以下の通りです。最上位に来るのは、高配当日本株でも紹介した、KDDIになります。
その後、自動車、メーカー、通信などの大手企業が上位に来ています。
(出所:ブラックロック )
本ETFの特徴としては、配当利回り金額だけではない銘柄選定を行っていることです。
無配や収益マイナスは除外、過去5年減配している企業も除外、配当性向上位5%も除外するなど、「ただ配当が高いだけの企業」は除外されています。
また、株価の下落率上位5%も除外するなど、質の高さを保とうとしています。そういった中での銘柄選定なので、価格がぶれにくい、今後のアップサイドが見込めるなどのメリットもあります。長期投資に向いた銘柄だと言えるでしょう。
1489 日経高配当株50ETF
日経高配当株50ETFの基本情報は以下の通りです。
- コード 1489
- 名前 日経高配当株50ETF
- 利回り 3.82%
- 構成銘柄数 49
- 経費率 0.28%
- 純資産総額 24.873(十億)
- ベンチマーク 日経平均高配当株50指数
- 運用会社 野村アセットマネジメント
日経平均高配当株50指数という指数に連動したETFになります。
日経平均高配当株50指数は、日経平均構成銘柄のうち、特に配当利回りの高い50銘柄から構成される指数です。
配当利回りウエート方式をとっており、配当利回りに流動性を加味して構成銘柄の指数算出上のウエートを決定しています。2017年1月10日から算出を開始した、新しい指数になります。
銘柄数は先ほどのiシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETFに比べると多い49銘柄です。
経費率もiシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETFに比べると割高の0.28%となっていますが、許容範囲内と言えるのではないでしょうか。
日経高配当株50ETFのリターンは以下のようになっています。
(出所:Bloomberg)
見ての通り、ほぼ日経平均と同じような動きを見せています。
上値が重いのはiシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETFと同じですね。
スタートした時期がよくないため、マイナスに大きく振れていますが、こちらも今後の下落相場では、ある程度の下支えはあると考えています。
直近1年の配当を足してもマイナスパフォーマンスになっています。
しかし、高配当株は、長期で持つことが前提になっているので、今後3年、5年たっていけば、パフォーマンスは変わってくるかもしれません。
構成銘柄は以下の通りになっています。同じ高配当ETFでも、iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETFとでは構成銘柄が大きく異なります。最も保有割合が大きい銘柄がJTで、その次が日産自動車となっています。
直近は、日産自動車が大きく値を落としたことも、ファンドの価格に影響を与えていそうですね。
(出所:NEXT FUNDS )
1494 One高配当日本株
One高配当日本株の基本情報は以下の通りです。
- コード 1494
- 名前 One高配当日本株
- 利回り 2.51%
- 構成銘柄数 49
- 経費率 0.28%
- 純資産総額 10.293(十億)
- ベンチマーク S&P/JPX 配当貴族指数
- 運用会社 One アセットマネジメント
One高配当日本株は、S&P/JPX 配当貴族指数をベンチマークとしたETFです。
S&P/JPX 配当貴族指数とは、東証株価指数の中で、10年以上にわたり毎年増配をしているか、または安定して配当を行っているという条件の元に選ばれた、配当利回りの高い企業のパフォーマンスを測定するように設計された指数になります。先ほどと異なるのが、日経平均ではなく、TOPIX全体をターゲットにしているといったところでしょうか。
組み入れ銘柄数は日経高配当株50ETFと同じ49銘柄になっています。経費率も同様に0.28%ですね。分配金利回りは、2.5%と、上記2つと比べると少し見劣りする水準になっています。
One高配当日本株のパフォーマンスは以下のようになっています。
(出所:Bloomberg)
こちらも他の高配当ETFと同じようなチャートになっています。One高配当日本株もできて1年と少しのファンドになります。
構成銘柄は以下の通りです。上記2つのETFが割と大型銘柄ばっかりだったのに対し、中型株の奥村組が最も上位で組み入れられているのが特徴になります。
奥村組は時価総額1500億円前後の中型の銘柄になりますが、配当利回りは3.41%と、高い水準にあります。とはいえ減配を発表しているので、来年はこの銘柄の構成から外れている可能性もありますね。
(出所:Oneアセットマネジメント)
1577 日本株高配当70ETF
日本株高配当70ETFの基本情報は以下の通りになっています。
- コード 1577
- 名前 日本株高配当70ETF
- 利回り 3.32%
- 構成銘柄数 70
- 経費率 0.32%
- 純資産総額 81.182(十億)
- ベンチマーク 野村日本株高配当70
- 運用会社 野村アセットマネジメント
日本株高配当70ETFは、野村金融工学研究セクターが出しているインデックスである、野村日本株高配当70に連動したETFになります。
野村日本株高配当70は、国内上場株式の中から、予想配当利回りが高い70銘柄を選んで構成銘柄とした、等金額型の指数です。
配当継続性に配慮して、過去3年間に経常利益がマイナスとなったことのある銘柄は組入対象から除外、また、予想配当がゼロとなった構成銘柄は期中に除外して今期予想配当利回りが高い銘柄で補完、また、日次平均売買代金が小さい銘柄を組入対象から除外することで投資可能性に配慮するなど、こちらもただの配当利回りで選んでいるわけではありません。
恣意的に選んでいる分、経費率は0.32%となっていますが、純資産総額は多くあります。配当利回りも3.32%と高配当と言ってよいでしょう。
また、こちらのETFは5年以上ある、歴史あるETFと言えます。
日本株高配当70ETFのパフォーマンスは以下の通りとなっています。
(出所:Bloomberg)
こちらのETFは、日経平均と比べても、最近はややマイナス傾向が目立つものの、2017年の時点では日経平均をアウトパフォームするなど、比較的高配当ETFの中では、しっかりとキャピタルゲインも得ることができそうな銘柄になっています。
ただ、直近の下落相場で落ち込みが激しいのが悩みの種と言えるでしょう。
構成銘柄上位は以下の通りです。
こちらもアマダホールディングス、DICなど中型株が上位に組み込まれているのが特徴です。
また、純資産比率が均等に1.5%程度となっており、本当にきれいに分散されているのが特徴になります。組み入れが最も大きいものの割合が1.56%、最も小さいもの(SBIホールディングスです)が1.13%となっており、わずか0.43%しか差がありません。
(出所:NEXT FUNDS )
・1651 ダイワTOPIX高配当40
ダイワTOPIX高配当40の基本情報は以下の通りになっています。
- コード 1651
- 名前 ダイワTOPIX高配当40
- 利回り 3.97%
- 構成銘柄数 40
- 経費率 0.19%
- 純資産総額 12.583(十億)
- ベンチマーク TOPIX 高配当 40 指数
- 運用会社 大和投資信託
ダイワTOPIX高配当40は、TOPIX高配当40指数をベンチマークした指数になっています。TOPIX高配当40指数は、TOPIX 100 の構成銘柄から直近1年間の配当実績に基づく配当利回りの高い 40 銘柄を、時価総額加重平均型(ただし、上限を5%とする)方式で抽出されています。
予想ではなく、実績の配当を見るということ、また、シンプルに配当利回りしか見ないという点で、利回りに特化した銘柄だと言えるでしょう。1年に1回銘柄は見直されます。
経費率は、シンプルなETFであるということもあり、0.19%と高配当ETFの中では最安値の水準となっています。利回りは3.97%と、高い利回りを維持できています。
ダイワTOPIX高配当40のパフォーマンスは以下の通りになっています。見ての通り、ここ1年のパフォーマンスは芳しくありません。しかし、これは他の高配当ETFと同じ状況であると言えるでしょう。
逆に、他のETFと差異がないのであれば、経費率と利回りの関係から、こちらを選択するのも良いかもしれません。
(出所:Bloomberg )
構成銘柄は以下の通りです。時価総額加重平均なので、時価総額が高い大きい企業の割合が多いですね。今回紹介しているETFの中では上位銘柄への偏りが大きいETFとなっています。
(出所:大和投資信託 )
1698 上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100)
上場インデックスファンド日本高配当の基本情報は以下の通りになっています。
- コード 1698
- 名前 上場インデックスファンド日本高配当
- 利回り 3.74%
- 構成銘柄数 100
- 経費率 0.28%
- 純資産総額 17.572(十億)
- ベンチマーク 東証配当フォーカス100指数
- 運用会社 日興アセットマネジメント
上場インデックスファンド日本高配当は、東証配当フォーカス100指数というインデックスに連動するように設計されています。
東証配当フォーカス100指数とは、TOPIX1000および東証REIT指数の構成銘柄のうち時価総額および予想配当利回りに着目して選定された100銘柄(株式90銘柄、REIT10銘柄)を対象とする指数です。
他のETFと異なるのは、こちらの指数にはREITが入っているということです。
分配金利回りは3.74%、また、構成銘柄は唯一三桁の100となっています。経費率は0,28%と、水準としてはまずまずの水準になっています。
上場インデックスファンド日本高配当のパフォーマンスは以下の通りです。
(出所:Bloomberg)
一時期は日経平均を大きくアウトパフォームしていましたが、直近は日経平均に対して劣後している状況です。
とはいえ、他のETFに比べるとパフォーマンスがよくなっています。REITが入っている分、リスクは分散されているのかもしれませんね。
構成銘柄は下記の通りとなっています。トップは29年連続増配の花王になります。上位の8位、9位がREITになっていますね。また、こちらも、上位の構成銘柄の構成比率が高くなっています。
(出所:日興アセットマネジメント )
まとめ
5%を目指すうえで、インカムゲインを作っていくために、高配当利回りのETFという選択肢があります。ETFであれば、リスク分散効果が得られる上に、リバランスという点でも個別株より優れています。
一方、株主優待を受けることができない、というデメリットはあります。
今回6本のETFを紹介しました。どのETFも、インカムゲインと言う点では魅力的なETFになります。
もし、ここからあえてETFを選ぶとするのであれば、経費率の観点からは、
- 1478 iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF
- 1651 ダイワTOPIX高配当40
の2本が0.2%を切っている銘柄であり、ローコストであると言えるでしょう。
または、少しアクティブなものを選んで、しっかりとキャピタルゲインも狙っていくのであれば
- 1577 日本株高配当70ETF
- 1698 上場インデックスファンド日本高配当(東証配当フォーカス100)
あたりのETFが、日経平均と比較してもそん色ないパフォーマンスを出しているため、おすすめかもしれません。
ある程度リスク分散も分配金も狙えるこちらのETFは、投資初心者にとってもぴったりなETFかもしれませんね。
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