ここまでは、「国」という切り口で、いろいろ話をしてきました。先進国投資、新興国投資、そして、VTのようなグローバル全体に投資するETFよりも、パフォーマンスの面からも、グローバル・カンパニーの多い、アメリカ株に投資することが、効率的で効果的である、ということが理解できたのではないでしょうか。
さて、今回からは、米国株の中で、様々なETFを紹介していきたいと思います。
ETFには、様々な切り口があります。その中でも、まずは、代表的な切り口である、「セクター」について、まずは考え方を整理したいと思います。
アメリカを代表する、11セクターとは?
アメリカ株は、よく11セクターに分類されます。その11セクターとは、生活必需品、ヘルスケア、公益、情報技術(ハイテク)、資本財、エネルギー、電気通信、一般消費財、金融、素材、不動産です。
それぞれ、イメージさせるために、代表的な企業を挙げてみましょう。(かっこのあとはティッカーコードです。)
- 生活必需品:P&G(PG)
- ヘルスケア:ジョンソンアンドジョンソン(JNJ)
- 公益:サザン・カンパニー(SO)
- ハイテク:アップル(AAPL)
- 資本財:ロッキード・マーチン(RMT)
- エネルギー:エクソンモービル(XOM)
- 電気通信:ベライゾン・コミュニケーション(VZ)
- 一般消費財:マクドナルド(MCD)
- 金融:ウェルス・ファーゴ(WFC)
- 素材:ダウ・ケミカル(DW)
- 不動産:ジロー・グループ(Z)
この中でも公益や不動産は、基本的にアメリカ国内で完結する企業が多いので、知らない人も多いかもしれません。
しかし、それ以外の会社は、みな、一度は聞いたことはあるのではないでしょうか。アメリカ企業に投資することが、グローバル市場に投資するということだというのが、よくわかるのではないでしょうか。
セクターごとのパフォーマンスはどうなっている?
では、セクターごとにパフォーマンスは異なるのでしょうか。実績を見てみましょう。
まずは、直近のパフォーマンスです。
JPモルガンが出している「Guide to the Market」に、2018年の1-3月のパフォーマンスが出ているので、見てみましょう。
一番苦戦しているのは、電気通信で、リターンがマイナス5%を超えています。
最もリターンが高いのは、ハイテク株で、プラス4%程度です。今年1月に入ってからは、相場が比較的不安定なため、プラスになっているセクターは2セクターにとどまっています。
では、もう少し長期的な観点で見るとどうでしょうか。ジェレミー・シーゲル氏の「株式投資の未来」に、1957年~2003年の長期でのS&P500のセクター別のリターンがあるので、そちらを見てみましょう。
長期で見ると、ヘルスケアセクターがリターンが高いように見えます。逆に、電気通信セクター、素材セクターなどはパフォーマンスが比較的停滞しているように見えますね。
ただ、これだけを見て、「ハイテクセクターがやっぱり良い」「ヘルスケアセクターに投資すれば間違いない」というのは、少し早計だと言えるでしょう。
セクターの波は景気と金利で説明できる
実は、セクターに限って言うと、どのセクターが良い、悪いというのは、あまり意味がありません。なぜなら、その時代背景によって、セクターには強弱がつくものだからです。
有名な表として、どのセクターに投資すべきかを、金利の軸と景気の軸で分類した表があります。下記の表を見てみましょう。
これは、米国株投資をやっている人であれば、一度見たことがあるかもしれません。
たとえば、今は、「金利が高く」て、「景気が強い」時期ですので、工業株や素材株を買うのがよい、と言われています。逆に、通信やヘルスケアは、不況時に強い株と言われています。
このように、セクターには波があります。そのため、「どのセクターに長期投資する」というのは、あまり意味がないことであると言えるでしょう。景気と金利の波を見ながら、景気のタイミングを見極めるのが、セクター株の正しい使い方といえるでしょう。
まとめ セクター株は、時代の流れを見極めるいい材料
アメリカでは、セクターは主に11に分けられています。
過去長い間を見てみると、ヘルスケアセクターのリターンが高かったのですが、最近ではFANG株をはじめとするハイテク株が人気で、高いパフォーマンスを出しています。
セクターに分けて、株式やETFを見ることは非常に重要です。なぜなら、セクターは景気と金利によって、ある程度好調不調の波があるからです。たとえば、金利が低くて景気のいい時は、ハイテク株が好調になることが多いです。
逆にいうと、1つのセクターに絞って投資するのは、リスクが高いといえるでしょう。なぜなら景気は循環するからです。もちろんいい時もあれば、悪い時もあるでしょう。ただ、悪くなることがわかっていて保有するのは、あまり得策とは言えません。
セクター株は、景気や金利がどのように動いてきたかを示す指標にもなります。1つのセクターを保有するのではなく、時々に応じて、セクターを変えていくのが、いい投資方法といえるのではないでしょうか。
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