「ダウの犬」投資法を検証【デメリットはあるのか?】

ダウの犬のパフォーマンス

前回の記事では、2019年に5%利回りを目指すために、米国株がいいよ、という話をしました。

アメリカ株は、日本株に比べるとなじみが少なく、また、「よくわからない」という理由で敬遠してしまう人も多いかもしれません。

しかし、実は、アメリカの企業は、日本以上に株主還元姿勢が強く、また、市場自体が成熟していることや、アメリカでは若年層の人口が増えており、経済的にもまだまだ成長よりがあることなどから、日本に比べると投資がしやすい環境が整っているとも言えます。

実際、私個人としても、日本株より、アメリカ株のほうが、投資しやすいと感じています。

そのアメリカ株の中で、S&P500に採用されている大型株のうち、25年以上増配している銘柄を配当貴族、50年以上増配している銘柄を配当王と呼びます。25年以上増配されている企業はアメリカで131社あり、日本の1社とは大きな差があります。

こういった企業に投資すれば、今後も高い確率で、配当金が増えていくことが想定されます。

前回の記事⇒配当貴族・配当王の中のおすすめ銘柄は?米国株で利回り5%超を実現させる

今回は、アメリカの高配当株に投資する方法として、もう1つ有名な指標である、「ダウの犬」について解説します。

「ダウの犬」とはどういう投資法?

まず、そもそも、ダウの犬とはどういう投資法かについて、解説したいと思います。

ダウの犬とは、別名ダウ10種とも呼ばれる投資法です。アメリカ株式市場には、S&P500とならび、有名な指標として、ダウ工業株価指数というものがあります。こちらは30の超大型企業からなる指標です。

こちらのダウの株式銘柄の中から、年末時点で配当利回りの高いトップ10の企業に対して投資するという手法になります。

なぜ、犬かというと、ダウ工業平均の銘柄の中で、配当利回りが高くなっている企業というのは、つまり、株価が低くなっている企業になります。

こういった「負け犬」に投資することから、ダウの犬と呼ばれるようになったのです。ちなみに、この10種類から、株価が低いもの5つを選ぶ戦略は「ダウの子犬」と呼ばれます。

ちなみに、ダウの犬というのは、毎年銘柄が変えて投資することを推奨しています。

なぜなら、ダウの犬戦略というのは、ある意味、その時最もパフォーマンスの悪い株を買うことになるからです。一時的に割安な株を持って、その株価が回復するのを待ち、回復したら次に割安な株を探す、その割安さを配当利回りという指標で見ている、と考えればよいでしょう。

この部分が、長期保有を前提とした配当貴族や配当王と、最も異なる部分であると言ってよいでしょう。

実際、ダウの犬のパフォーマンスはどうなのか?

では、実際、ダウの犬のパフォーマンスはどうなのでしょうか。

2001年以降の、ダウとのトータルリターンでの比較を行ってみましょう。

ダウの犬のパフォーマンス

ダウの犬は、S&P500に対して、過去18年で、12回勝ち越しをしています。勝率は66.7%であり、高い確率でアウトパフォームしていると言ってよいでしょう。

しかし、一つ気になる点は、2008年のリーマンショックの時は、ダウの犬が負け越している、ということです。

暴落の時は、配当利回りの高さを問わず、株価を下げる傾向があるようにも見えるので、こういった相場の時は注意したいですね。

また、金利が上がってきた2016年、2017年も、ダウの犬がダウを下回っていることには、注意が必要かもしれません。

2018年の銘柄ごとのパフォーマンスを見てみましょう。

2018年は、以下の銘柄が、ダウの犬の銘柄でした。

ダウの犬銘柄

最もリターンが高勝手のは、製薬株であるメルク、ファイザーで、それぞれ+39%、+24%の高いリターンでした。

最もパフォーマンスが悪かったのはGEです。GEは減配およびダウ30種から外れるなど、逆風が吹いた1年となりました。トータルのパフォーマンスは、-54%と半分以下になっています。

2019年のダウの犬銘柄は?

では、2019年のダウの犬銘柄は、どのような銘柄になっているのでしょうか。以下が、2019年のダウの犬銘柄です。

ダウ犬銘柄2019年

実は、銘柄の変更はあまりありません。1銘柄のみが変更になっています。GEが抜けて、JPモルガン・チェースが入っています。

ダウの犬に弱点はあるのか?デメリットは?

こういった、「大型株」「高配当」「割安」に投資するダウの犬投資法は、一見とても有効に見えます。

では、そういった戦略に、弱点はあるのでしょうか。

個人的には、銘柄の入れ替えが少ないことが、弱点になりうるのではないかと考えています。

ダウの犬戦略は、本来、1年で割安株は正常な範囲まで戻ることを前提に考えられている戦略になります。

同じ銘柄が何年も続くということは、その銘柄は、「そもそも一時的に割安なのではなく、ずっと低位に沈んでいる」ということになります。こういった株を持ち続けるかどうかというのは、個人的には議論の余地があると考えています。

もう1つは、配当性向などが顕著に表れるということです。

たとえば、アップルやビザなども、ダウ30種を構成する銘柄になります。しかし、こういった銘柄が、たとえば決算が悪くても、しばらくダウの犬銘柄になることはないでしょう。

なぜならば、これらの企業は、どちらかというと、配当よりも、成長に利益を使う傾向があるからです。そういった、企業の配当戦略が影響される中で、高配当銘柄を選ぶというのは、個人的には少ない気がしています。

ダウの犬戦略より優秀?ダウコア10種、S&P10種、S&Pコア10種とは?

とはいえ、ダウの犬のパフォーマンスが高いことは、歴史が証明しています。ということで、このダウの犬戦略というの、個人投資家には非常に人気のある戦略になります。

人気のある戦略には、もちろんその亜種が存在します。それが、ダウコア10種、S&P10種、S&Pコア10種になります。それぞれの戦略について簡単に説明しましょう。

ダウコア10種というのは、ダウの犬戦略に、「15年間減配なし」という条件を加えたものになります。15年減配なし、という条項を加えることで、より、配当にフォーカスを当てたものになります。15年減配なしということは、期中で減配になるリスクが、より少ないという風に判断されるからです。

同じく、S&P10種という投資法もあります。S&P10種とは、S&P100の採用銘柄の中から、配当利回りが高いものを10種類選ぶ、という投資法です。

S&P100というのは、米国株の中でも、特に時価総額の大きい100銘柄になります。こちらに入っている銘柄は、ダウに比べると、比較的小型株もまじっていますが、それでもアメリカの株式市場の中では高い時価総額を誇る大型企業になるわけです。

100種類の中から10種類を選ぶ形になるので、それなりに分散ができており、かつ、高い配当利回りが期待できるという点で、個人的にはダウの犬よりもパフォーマンスが高い可能性があると思っています。

さらに、このS&P10種に、「15年間減配なし」という条件を加えたものがS&Pコア10種になります。考え方は、ダウコア10種と同じですね。

では、2018年のこれらの銘柄のパフォーマンスはどうだったのでしょうか。見てみましょう。それぞれのトータルリターンは以下の通りです。今年は、ダウの犬が最も高いパフォーマンスになりました。

2018年ダウ犬銘柄パフォーマンス

銘柄ごとのリターンは下記の通りになります。

銘柄別ダウ犬パフォーマンス

参考までに、2019年のそれぞれの銘柄を見てみましょう。2019年の銘柄は以下の通りになります。

2019年のそれぞれの銘柄

すべての指標が正しい、とは限らない

では、これらの指標のうち、どれを選ぶのが正しいのでしょうか。個人的には、どれも正しい、でもどれも正しくない、というのが1つの答えではないか、と考えています。

ダウの犬も、S&P10種も、すぐれた戦略であることには変わりません。しかし、それでも、ダウの犬は-50%超のGEが入っていますし、すべての指標で-25%のIBMが入っています。

このように、良い銘柄もあれば、悪い銘柄もあるというのがこの投資方法だと言えるでしょう。

個人的には、この指標は、一種の銘柄スクリーニングとして使って、この中から、セクターや各種指標から、自分で銘柄を選ぶ、というのが、ある程度使い方としては良いのかな、と感じます。実際私も、この中にある銘柄には、いくつか投資しています。

あくまで参考指標程度、と捉えておいた方がよいかもしれません。

まとめ

ダウの犬とは、ダウ30種の銘柄のうち、利回りの高い銘柄TOP10に投資するという、「超大型」「割安」「高配当」銘柄に投資する方法になります。似たような投資方法として、ダウコア10種、S&P10種、S&Pコア10種などがあります。

これらの方法は、過去、ダウインデックスやS&P500を上回るパフォーマンスを出してきたこと、また、再現性が高い方法として、個人投資家に人気のある指標になります。

もちろんそれぞれの個別銘柄を見ると、必ずしもプラスではありませんし、GEのように大きくマイナスの銘柄もあります。また、どの指標が一番良いのか、というのは、あくまで個人の好みの問題になります。

ただ、参考になるデータとしては非常に有効なので、高配当株を選ぶ場合、ここから選ぶのは、1つ良い選択肢だと言えるのではないでしょうか。

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