有事の金はまだまだ機能する?最高値を目指す金価格の行方は?
コロナウイルスの影響で、株も為替も価格が不透明なこの春の相場状況。
さらに、政治的な思惑もあり、原油価格は一時期先物がマイナス価格になるなど、混迷を極めています。
そういった状況で注目されているのが「金」。年初来の高値を更新するなど、資産の中でも比較的好調に推移している状況です。今後も金価格はあがっていくのか。解説します。
好調に推移する金価格
各資産が大きく乱高下する中で、今、唯一といって良いほど好調なのが金価格。
金先物は好調に推移しています。一時3月は価格が乱高下しましたが、現状は好調に推移し、1800ドルをうかがおうとしています。
下図は金先物のチャートになります。
(出所:Investing.com )
昔から、金は、「有事の金」として知られており、リーマンショックの時も値上がりを見せました。(金が史上最高値をつけたのは2011年の時です。そこから金は価格を下げていました。)
今回も、こういった経済状況もあいまって、金に資金が流れており、先物価格があがっている状況になります。
金価格があがっている背景には何がある?理由
では、今回、金価格があがっている背景には何があるのでしょうか。
もちろん、「有事の金」というのはあります。しかし、実態はもう少し複雑です。解説していきましょう。
通貨に対する不安感、インフレ懸念
まず1つ、大きくあるのは、「通貨に対する不安」です。
通貨に対する不安、といってもピンとこないかもしれません。もっとかみ砕いていうと、「インフレへの懸念です。」
いち早く大きな金融緩和をしたのはアメリカで、実質的にゼロ金利を復活させ、量的緩和も実施。
総額2兆ドルもの経済対策をトランプ大統領が発表するなど、これまでにない財政出動で経済を支えようとしています。
日本も追加の国債買い入れやETF買い入れを行う、ヨーロッパもECBが量的緩和を大幅拡充し、各国が財政出動をするなど、世界的な財政出動を行っています。
これにより起こるのが、世界的な金余り、への懸念です。
単純に、通貨の供給量が増えても、モノの供給が急激に増えるわけではありません。そのため、何が起きるかというと、通貨の価値の下落、つまりインフレです。
今は消費が上がらないため、インフレは起きづらい状況ではありますが、景気の回復に伴って、インフレが起こることが予想されます。
そのため、インフレに強いと言われている金に、資金が流れ込むのです。
石油相場への不信感
これまで、金と原油は、オルタナティブ資産として、資産の逃げ先としてたびたび使われていました。
しかし、オルタナティブ資産の1つである原油が、現時点で、到底信用がおけるものではありません。
そのため、こういった資金も、(さらには原油から流出した資金も)金に行っていることが考えられます。そういったことも、金価格の上昇に拍車をかけていると言えるでしょう。
コロナにおける社会不安に加え、通貨不安、そして原油への不安もあり、金価格がここまで上昇していると予想されるのです。
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金価格は最高値を更新するか?
では、金価格は、今後さらに上昇して、史上最高値(2011年8月、9月につけた1920ドル)を更新するのだろうか、それとも、上昇はひと段落するのでしょうか。
基本的には今後も上昇していくと考えられます。しかし、それがゆるやかなのか、急速に進むのか、というのがポイントになるでしょう。
ゆるやかに上昇していくケースというのは、コロナが収束するという予想に基づくものです。
コロナが収束すれば、企業活動はある程度元に戻ることが予想されます。
実際、IMFは2020年4-6月期を元も経済状況が悪いものと推測しており、そこからは回復傾向にあるとしています。
それが真実であれば、株や不動産などリスク資産に再び投資資金が流れ込むでしょう。実際、2-3月に株価が大きく下落したあと、現状は回復傾向にあるのは、こういった経済回復に対する期待感があるからです。
そうすると、インフレなりに金価格はゆるやかに上昇していくことが予想されます。
一方、急速に上昇していくケースは、経済停滞が長く続く場合です。
このままロックダウンや自粛が続けば、経済活動は縮小せざるを得ません。
そうすれば、今の株価を支えているであろう期待感も失われ、そういった資金がますます金に流れ込んでくることが予想されるのです。
いずれにせよ、金価格が下がるシナリオをいうのは現状予想しづらいかと思います。そういった意味で、今、金に投資するのは、悪くない選択肢だといえるでしょう。
まとめ
ここしばらく価格が上昇基調にある金。有事の金という性質はそのままに、石油価格の不安や、通貨不安もあいまって、史上最高値をうかがう勢いにあります。
今後も引き続き上昇が期待できる金。株やETFのヘッジとして、持っていても損はないかもしれません。
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